研究課題/領域番号 |
23770020
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
塩尻 かおり 京都大学, 次世代研究者育成センター, 助教 (10591208)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交流(アメリカ合衆国) |
研究概要 |
植物のコミュニケーションは、生態系において多様な生物の共存を可能にしている群集安定性の維持機構解明において、新たな視点を与える研究分野である。当該分野は2000年以降、生態学的手法ならびに分子生物学的手法によりその実態解明が行われてきているが、その適応的意義を含む全体像の理解には程遠い。そこで、本研究では、1)植物コミュニケーションの適応的意義について、血縁選択、誘導反応のコストとベネフィット、の視点から包括的に解明し、さらに、2)植物コミュニケーションの一般性を明らかにする。1)においては、これまで申請者が用いてきたセージブラッシとセイタカアワダチソウを用いて、血縁選択の視点から以下の2つの検証をおこなった。(1)繁殖様式の確認:分布の拡大において、クローン繁殖が主か種子繁殖が主かによって近隣に生育する血縁関係が大きく異なってくる。そのため、根を掘り近隣個体との関係を明らかにした。また、セージブラッシではDNA解析をおこない血縁関係も明らかにした。(2)血縁関係とコミュニケーションとの相関:血縁度と植物が放出する匂いの類似度が一致するかを、セージブラッシ、セイタカアワダチソウで明らかにした。さらに、野外においてクローンをもちいて、血縁度の近いもの遠いものの組み合わせで、植物間コミュニケーションの強さを実証した。2)においては、可能な限り多くの植物種を対象に、野外操作実験をおこない、どのような種で匂いコミュニケーションがおきているのかを調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、初年度で、目的1)の植物間コミュニケーションの適応的意義の解明において、(1)繁殖様式の確認、(2)血縁関係とコミュニケーションとの相関を実施し、良い結果を得られた。血縁関係とコミュニケーションでは、植物が近縁個体の匂いを受容するほど、誘導反応が強く引きおこり、虫に食べられにくくなるという結果をえた。これは植物間コミュニケーションの適応的意義を考える上で重要な結果である。また、植物が血縁認識でき、それを匂いで行っていることを示唆する興味深い結果である。目的2)の植物間コミュニケーションの一般性の解明においては、複数の野生種の安定した野外個体群落を探しだし、利用許可をもらい野外調査を行った。植物種によっては、処理する時期が早かったりあるいは、調査する時期が遅かったりして、対象とした全ての植物種において結果は得られなかったが、今年度からの計画に反映する。しかしながら、計9種において結果が得られた。野外でこのような多くの種を対象とし明らかにした研究は今までにない。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、次年度は、目的1)においては、昨年度と同じ方法でセージブラシとセイタカアワダチソウを対象に(2)血縁関係とコミュニケーションとの相関の実験を実施する。また、(3)形質の個体変異を明らかにする。特に野外における植食者相に注目し、クローンごとに植食者相が異なるかを検証する。さらに、それらの植食者に食害されたときに放出する匂いの違いをガスクロマトグラフィー質量分析計を用いて明らかにする。目的2)においては、(1)野外検証として、昨年度にコミュニケーションが明らかになった種において、もう一度、同じ処理を行いコミュニケーションの有無を確認する。また、昨年度、時期を外した種と新たに使えそうな種において、野外操作実験をおこなう。さらに、(2)揮発性成分の分析とコミュニケーションに共通する成分の検出として、匂いを捕集し、分析を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は、所属する研究室において実験設備は整っていたため、備品をなにも買う必要がなく、繰越する額が多くあった。また一方で、人手が足りず、調査時期を逃してしまったりすることがあった。そのため、次年度は1人を研究員として雇用する。また、次年度は野外調査だけでなく、食害された植物の匂い捕集など、数種の植食者(虫)を飼育し、食害実験に使用するので飼育の補助として、実験助手を一人雇用する。その他は野外調査旅費として使用する。また、論文を2本作成するにあたり、英文校閲費として使用するつもりである。
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