研究課題
東南アジア熱帯雨林には、林冠にも低木層に多種のアリ植物が豊富に分布する。アリ類と植物の究極的に密接な相互作用系であるアリ植物共生で、さらにそこに入り込む第三の役者である好蟻性生物に注目し、アリとの関係を形成し維持する化学的な機構について調べてきた。ウラボシ科着生シダでは、非常に強力なシリアゲアリ1種が排他的に占有するにもかかわらず、多様な好蟻性昆虫が発見され、多くは未記載種であった。また、それらのうち圧倒的に存在量が高かった好蟻性ゴキブリでは、自前の化学プロファイルをアリに押し付けていることが分かり、食物網解析から絶対的にシダおよび宿主シリアゲアリと共生関係にあることが分かった。また、オオバギ属アリ植物を専食するムラサキシジミ幼虫では、初めて植物擬態種を発見をした。この種は体表炭化水素をほぼ完全に欠くという高等な昆虫としては異例のプロファイルを示した。アリと好蟻性昆虫の相互作用系は、これまでも多くの研究で扱われてきており、化学擬態が実証されてきた。しかし、本研究の結果は、熱帯雨林では従来の知見が当てはまらないケースが容易に見つかるということを示している。非常に多様性が高い熱帯雨林の節足動物群集において、アリ植物上の好蟻性昆虫群集は、アリ植物という限られた生息場にパッチ状に存在する多様性のサブセットであるが、そこにも多様な未知の種や関係が詰まっている。これらの成果は国際的な学術誌に複数の論文として発表するに至った。またその一部は米科学振興協会のハイライト研究ポータルや日本の新聞で記事となった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (1件)
Plos One
巻: 10 ページ: e0120652
10.1371/journal.pone.0120652
巻: 10 ページ: e0116602
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