研究課題/領域番号 |
23770025
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
佐々木 晶子 広島大学, 生物圏科学研究科, 助教 (10535470)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 河口干潟 / 炭素循環 / 落葉分解 / 底生動物 |
研究概要 |
調査地のリターパッチに優占的に見られる大型底生動物を対象として、落葉を餌資源として利用している可能性を摂食実験により検討した結果、特定の大型底生動物が、河川を介して供給された落葉を直接的あるいは間接的に餌資源として利用している可能性が示唆された。 実験には、調査地の約1km上流で採取したヨシの落葉(風乾リター)と、落葉を予め干潟に2週間設置し、バクテリアや微細藻類等の微生物を定着させたもの(コンディショニングリター)を用いた。野外のリターパッチに高頻度で認められる大型底生動物を対象として、約1ヶ月間摂食実験を行った結果、風乾リターでは落葉面積と重量に大きな変化は認められなかった一方、甲殻類(イソガニ類、ヤドカリ類)に与えたコンディショニングリターは、底生動物の摂食活動による明瞭な落葉面積と重量の減少を示した。このことは、河川を介して供給された落葉が、バクテリアや藻類の定着(コンディショニング)を経た後に、大型底生動物の餌資源として利用されている可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度に予定していた摂食実験を計画通り遂行した。現在は対象とした底生動物、およびコンディショニングを経た落葉に加えて、野外で餌資源となりうる大型藻類や、堆積物表層の有機物も加えて、炭素・窒素安定同位体比分析を進めており、これらの結果をもとに、底生動物による落葉の利用状況について検討していく。また、次年度以降に計画している調査等の予備検討も進めており、本研究課題を当初の計画に沿っておおむね順調に遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
リタ―パッチの河口干潟における役割を検討するために、大型底生動物の生育場所としての重要性を野外調査により検討していく。また餌資源としての利用可能性については、当該年度の摂食実験の結果に基づき、引き続きバイオマーカー等を用いた大型底生動物の食性解析を進める。これらを統合し、河口干潟に形成されるリタ―パッチについて、大型底生動物にとっての餌資源および生育場所としての機能に焦点を当てて考察を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、昨年度から継続している大型底生動物の食性解析と、生育場所としてのリタ―パッチの重要性を明らかにするための野外調査を遂行する。そのため、研究費はこれらの依頼分析費や野外調査のための消耗品購入費、また研究成果発表のための旅費として使用する予定である。
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