研究課題
本研究では、日本全域に設置された55の森林プロットに出現する樹木およそ360種について、生活史戦略に密接に関係する形質データを収集し、形質の温度クラインとそのメカニズムを明らかにすることを目的にしている。初年度は、前年度から調査をしていた屋久島に加え、福岡、宮崎県田野、奄美、北海道雨竜、大雪、足寄の7地域10プロットを周り、プロットに出現する全ての種の葉や材のサンプルを得た。また別プロジェクトで関連する調査があり、東北大の黒川紘子博士らのグループと連携することができたため、彼らの調査も加えると、14プロットで合計1542サンプル、272種についてサンプルを得た。 これらのサンプルについて、葉については面積、重量、厚さ、含水率、強度を測定し、材に関しては材密度、含水率を測定した。予備的な解析から、葉の面積あたりの重量などは各森林の年平均気温と密接な関係があることが分かった。また落葉樹と常緑樹では温度クラインに大きな違いがあることも分かった。
2: おおむね順調に進展している
申請者の調査努力に加え、他プロジェクトの連携が可能になったため、非常に順調に進展している。
2年目は初年度に訪れることができなかった森林プロットを周り、より網羅的な形質データベースを作成することを目指す。2年目の調査努力により、当初予定していた「50余りの森林プロットに出現する樹木およそ360種」の9割以上についてサンプルが収集できる予定である。これらの種の基本的な形質データをまとめ、クライン解析や多様性解析に用いる。 また、集積したサンプルについて、葉の窒素、リン、細胞壁などのより詳細な化学分析を行う。これらの分析は時間と費用がかかるため、特定の種群または地域に焦点をおいて解析を行う。 これらの詳細な化学分析データを用いて、温度クラインを引き起こすメカニズムについてモデル化を試みる。
京都、和歌山、鳥取などにある森林プロットを周り、プロットに出現する全ての種の葉や材のサンプルを得る。これらの調査のために、申請者と調査協力者の旅費が必要になる。 大量に得られたサンプルを効率的に処理、分析するために、研究補助を雇い謝金を支払う。 調査器具の補充や、化学分析のために試薬や実験器具等を購入する。
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生物科学
巻: 63(2) ページ: 83-93