研究課題
本研究では、日本全域に設置された55の森林プロットの毎木データをもとに、日本産主要樹種について、生活史戦略に密接に関係する形質データを収集し、形質の温度クラインとそのメカニズムを明らかにすることを目的にした。共同研究者と連携協力して調査したため、当初の予定を上回る総計26プロットで320種余り(のべ2800個体)についてサンプルを得た。これらのサンプルについて、葉については面積、重量、厚さ、含水率、強度を測定し、材に関しては材密度、含水率を測定した。また、より詳細な化学分析として、窒素、同位体、細胞壁量などの測定を行い、網羅的な形質データベースを作成した。得られた形質データを利用し、形質と温度や降水量と関係を解析し、興味深い傾向が発見された。例えば、種内の形質の温度依存性は、群集レベルの形質の温度依存性に比べ小さいことが分かった。これはつまり、種内変異の幅が種の分布を規定する要因に繋がっている可能性を示唆する。成果発表に関しては、植物の機能形質と生態系機能の関係について、共同研究者と共に総説を発表した。また形質と群集構造の関係、遷移と共に森林の機能的多様性と生態系機能がどう変化するかなどについて、学会発表を行った。また形質データは、相対成長式の高精度化にも応用され、論文が投稿された。さらに国外の文献データを利用した形質の温度クラインの解析も行った。年平均気温の低下と共に落葉樹の葉の寿命は短くなり、常緑樹の葉の寿命は長くなるという興味深い現象について、生育期間の長さを考慮した最適葉寿命で、実際の現象が良く説明できることを証明した。この研究は権威のある国際誌に発表した。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)
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