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2012 年度 実施状況報告書

マングローブ植物の窒素獲得における土壌窒素固定菌の役割

研究課題

研究課題/領域番号 23770029
研究機関独立行政法人国立環境研究所

研究代表者

井上 智美  独立行政法人国立環境研究所, 生物生態系環境研究センター, 主任研究員 (80435578)

キーワードマングローブ / 窒素 / 窒素固定
研究概要

マングローブ植物の根圏では窒素固定活性が検出されることが多い。満潮時に冠水する土壌中で、窒素固定菌はどのように窒素ガスを獲得しているのだろうか?多くのマングローブ植物には呼吸根が発達している。呼吸根は、嫌気環境に適応した「酸素供給経路」であると考えられているが、空気の約80%は窒素であり、呼吸根は根圏への「窒素供給経路」でもある可能性がある。その貢献度を定量的に評価するため、西表島に分布するマングローブ植物のうち3種(ヒルギダマシ、ヤエヤマヒルギ、オヒルギ)について、根圏の窒素固定ポテンシャルを測定するとともに、呼吸根を通じたガスの拡散コンダクタンスも測定して土壌のコンダクタンスと比較した。
流路長と断面積で標準化した拡散抵抗で比較をすると、呼吸根を通じたガス拡散コンダクタンスは、冠出した土壌よりも16~27倍の高い値を示した。仮に流路を3センチとした場合、呼吸根経由の拡散速度は土壌経由の74~85倍、20センチでは43~63倍となる。各樹種の根平均断面積を加味した呼吸根内のガス拡散速度は オヒルギ ≈ ヤエヤマヒルギ > ヒルギダマシの順となった。一方、各樹種の根圏における窒素固定ポテンシャルは、ガス輸送能力が高いオヒルギでもっとも高く、ガス輸送能力が低いヒルギダマシでもっとも低かった。すなわちガス輸送能力と窒素固定ポテンシャルの間に正の相関関係が見られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、マングローブ植物の窒素獲得における窒素固定菌の役割を明らかにする事である。本年度は、マングローブ植物に特徴的に発達している呼吸根の通気組織が、根圏における窒素固定菌への窒素供給経路として効率的に機能していることを明らかにする事ができた。低窒素に陥りがちな沿岸域に生育するマングローブ植物の窒素獲得メカニズムを、新たな視点で解明する手がかりを掴むことが出来た。
以上のように、本テーマに関する興味深い知見を順調に得てきている。

今後の研究の推進方策

昨年度までの研究により、マングローブ植物の根圏では活発な窒素固定が行われている事が明らかとなった。更に、マングローブ植物に特徴的に発達している呼吸根の通気組織が、窒素固定菌への窒素供給経路として機能していることも示唆されたことから、マングローブ植物の根圏では、窒素固定バクテリアが活動しやすい、特異な環境が形成されている可能性がある。
次年度は、マングローブ植物の根圏における窒素固定機能の特異性を評価するため、窒素固定バクテリアの酵素特性に注目して進めていく。マングローブ植物の根圏における窒素固定酵素特性を、干潟土壌のものと比較する。

次年度の研究費の使用計画

野外調査と室内培養実験により検証を行う。そのため、研究費は調査出張旅費、野外調査協力謝金、培養実験用恒温チャンバーに使用する。さらに、窒素固定活性を計測するためのガス試薬、測定機器の消耗品費、得られた成果報告のための学会参加旅費、英文校閲費も見込んでいる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Butteflies and mangrove branches2012

    • 著者名/発表者名
      Baba S., Inoue T., Kadoya T., Fukuda K
    • 雑誌名

      ISME/GLOMIS Electronic Journal

      巻: 10 ページ: 13-15

    • 査読あり
  • [学会発表] マングローブ呼吸根の通気組織と窒素固定菌の関係

    • 著者名/発表者名
      井上智美、竹中明夫、安西康晴
    • 学会等名
      第18回目日本マングローブ学会
    • 発表場所
      東京
  • [学会発表] マングローブ植物の呼吸根と窒素固定菌の関係―戦略か副産物か

    • 著者名/発表者名
      井上智美、竹中明夫
    • 学会等名
      60回日本生態学会
    • 発表場所
      静岡

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公開日: 2014-07-24  

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