研究概要 |
本研究は、低窒素な沿岸域でも高い生産性を示すマングローブ植物の窒素獲得機構を明らかにするため、マングローブ土壌中で窒素固定を行っているバクテリアの酵素機能に注目している。これまでの調査により、マングローブ植物の根の周りで窒素固定活性が高くなっていることを明らかにした。そこに形成されている窒素固定バクテリアの酵素特性は、マングローブ根圏外とは異なる特異なものなのだろうか?反応を担っている酵素の特性が異なれば反応速度の温度依存性が異なることを利用してこれを検証することを目的とした。 沖縄県西表島の船浦湾に生育するマングローブ植物Rhizophora stylosaの孤立木9個体を無作為に選定した。各調査木の根圏および非根圏土壌を採取し、窒素固定反応速度を異なる温度条件下(12, 15, 21, 28℃)で計測し、反応速度定数の温度依存性―アレニウスプロットを作成した。 得られたアレニウスプロットは、根圏・非根圏の区別なく、やや直線性が低くなる場合があった。直線性が保たれない理由として、(i)バクテリアの生物活性に温度依存性があった、(ii)活性化エネルギーが異なる複数種の窒素固定酵素が土壌中に存在していた、ことを考えている。また、反応の活性化エネルギーは、根圏土壌の方が非根圏土壌にくらべて1.4倍高かった。この結果は、窒素固定酵素の種類または種構成が根圏と非根圏で異なっていることを示している。
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