研究課題/領域番号 |
23770032
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
山下 洋 独立行政法人水産総合研究センター, 西海区水産研究所 亜熱帯研究センター, 研究員 (00583147)
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キーワード | サンゴ礁生態系 / 褐虫藻放出現象 / 白化現象 / 海洋生態 / 生物圏現象 |
研究概要 |
サンゴ礁生態系は,多種多様な生物が生息し,高い生物生産を有する重要な生態系である。サンゴ礁生態系は,サンゴと褐虫藻と呼ばれるSymbiodinium属渦鞭毛藻との健全な共生関係の上に成り立つが,近年サンゴの白化現象に代表される,両者の共生関係の崩壊が問題となっている。本研究ではサンゴの白化現象に密接に関係のある,サンゴからの褐虫藻放出現象に着目し,特にストレス状態にない平時のサンゴがいつ・どのぐらいの量の褐虫藻を放出するのかを明らかにすることを目的としている。サンゴにストレスのかからない水温27度の海水をかけ流す3基の水槽に,それぞれ骨格重量209g, 196g, 159gのスギノキミドリイシを収容し,定期的に採取した海水試料中の褐虫藻(放出された褐虫藻)を定量した。その結果,一時間当たりの褐虫藻放出量は209gのサンゴからは最大で約260000細胞,196gのサンゴからは最大で約460000細胞,159gのサンゴからは最大で約100000細胞であった。放出は昼間多く夜間少ない傾向にあったものの,放出のピークは水槽ごとにばらつきがあり,同調した放出ではなかった。一方で,深夜1時から明け方6時にかけては,いづれのサンゴでも放出量が少なかった。サンゴ内褐虫藻は夜22時から明け方6時に集中して分裂することが昨年度の結果より明らかとなっているため,サンゴは褐虫藻が分裂している時間は,褐虫藻を放出しないと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンゴの白化に影響があるとされる水温上昇時の褐虫藻放出パターンを水槽実験により明らかにする予定であったが,センターの海水調温設備の故障により年度内に実施できなかった。しかし,現在までに調温設備の修理は完了し,水槽実験の準備もすでに整っているため,当該水槽実験は期間中に実施可能である。また,野外のサンゴからの褐虫藻放出パターンを調べるため,野外での長期サンプリングを行っているが,こちらもおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
まず,水温上昇時の褐虫藻放出パターンを明らかにする水槽実験を行う。また,野外での長期サンプリングを継続しつつデータの解析,取りまとめを行う。これまでに得られたデータは,学会での発表あるいは論文として公表に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
水槽実験が一部実施できなかったため,解析用試薬・プラスチック消耗品費の一部を繰り越した。これらは平成25年度に計上している物品費と合わせて使用する。また,平成25年度予算は,成果の公表にあたり,10th International Phycological Congressへの参加費,あるいは論文投稿時の英文校閲費等にも使用予定である。
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