研究課題/領域番号 |
23770033
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研究機関 | 福岡県保健環境研究所 |
研究代表者 |
中島 淳 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 研究員 (40584074)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 種数-面積関係 / 生物多様性 / 純淡水魚 / 水生甲虫 / イシガイ目二枚貝 / 河川 |
研究概要 |
2011年度は調査対象とした九州北部40水系における淡水魚類、水生甲虫類、イシガイ目二枚貝類について採集調査と文献調査を行い、各水系に分布する種リストの作成を行うことが主な研究内容である。以下各分類群における研究実績の概要をまとめる。 淡水魚類については15水系において補足的な採集調査を行うとともに、文献類の調査も行った。その結果、対象とした40水系における精度の高い魚類相リストを作成することができた。また、シマドジョウ属魚類、一部のコイ科魚類については形態学的な調査と遺伝学的な調査を行い、シマドジョウ属魚類は対象地域において複数の未記載種が存在することが明らかとなり、一部のコイ科魚類は天然分布ではなく琵琶湖淀川水系からの移入種であることが明らかとなった。このうちシマドジョウ属魚類の一部の種については、分類学的な検討を行った。 水生甲虫類については天候不順の影響等で、10水系における採集調査にとどまった。しかし、過去の文献記録に基づき、40水系におけるおおまかな種リストの作成を行うことができた。また、明らかな未記載種が発見されたので、分類学的な観点から検討を行った。 二枚貝類については20水系において採集調査、文献調査等を行い、おおまかな種リストの作成を行うことができた。また、採集調査の過程で、既知種の形態的特徴と一致しない集団が発見された。この集団については未記載種の可能性もある。 以上、本年度の調査により、対象とした3分類群すべてにおいて、現在の分類体系に当てはまらない集団が当地域に分布していることが初めて明らかとなった。これらのうちいくつかは未記載種の可能性が高く、当初の想定以上に当地域の種多様性は未解明であり、保全学上も重要な地域であることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年度は九州北部40水系における淡水魚類、水生甲虫類、イシガイ目二枚貝類の水系ごとの種リストの作成を行うことが主な目的であった。このうち、淡水魚類および二枚貝類の種リストの作成についてはほぼ予定どおり行うことができた。しかし、水生甲虫類の種リスト作成については当初予定とは異なったスケジュールで進行している。この理由として、水生甲虫相調査に適した夏季において、調査予定日における河川増水や降雨等の天候不順が重なり、調査水系数が予定の半数程度に止まったことが挙げられる。 一方で、未記載種・未記録種と考えられる種が各分類群において発見され、当初予想していた以上に当地域の種多様性が高く、また未解明であったことが明らかとなった。今後はこれらの未記載種・未記録種と考えられる種の分類学的位置付けの確定が新たに必要になる。
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今後の研究の推進方策 |
淡水魚類、水生甲虫類、二枚貝類のすべての分類群において、予想以上に未記載種もしくは未記録種と思われる集団が発見された。本研究では水系ごとの種数を確定させた上での解析を必須とするものであるため、2012年度はこれらの得られた集団が分類学的にどのような位置付けにあるのかを確定させる必要に迫られている。 以上の状況から、本年度の研究推進方策として、研究計画にあるとおりの分布調査を継続して実施していき、特に水生甲虫類の採集調査を優先して行っていきたい。さらに当初の予定にはなかったが、採集調査と平行して2011年度調査で得られた生物種の分類学的位置付けの確定も行う。その後に種数と水系規模の解析を行っていく予定とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在のところ、基本的な研究費の使用計画に大きな変更はないと考えている。しかし、予想していた以上に未記載種・未記録種と考えられる分類群が発見されたため、当初計画に含めていなかった遺伝子による解析と、形態分類に必要な器具の購入を行う可能性がある。 また、2011年度に予定していた水生甲虫類調査が天候不順等により計画どおり行えなかったため、その調査に使用予定であった旅費の一部を繰り越し、2012年度の採集調査旅費とあわせて使用することとし、調査回数を増やす予定である。
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