最終年度は調査計画に従って九州北部諸水系の淡水魚類、水生甲虫類、イシガイ科二枚貝類の分布調査をほぼ予定どおり実施した。本研究の目的は種数と河川規模の関係を明らかにするものであるが、調査の過程で既存文献類では同定できない形態的特徴を有するものが当初の予想以上に多く発見され、これらのうちいくつかは未記載種であると考えられた。したがって、最終年度は本研究の主目的である種数と河川規模の解析に先駆けて、分類学的研究を優先して進展させた。 学名未決定であった淡水魚類のうち、ドジョウ科シマドジョウ属魚類については1種2亜種が未記載であることが明らかとなったため、これらについてアリアケスジシマドジョウCobitis kaibarai、ハカタスジシマドジョウC. striata hakataensis、オンガスジシマドジョウC. striata fuchigamiiとしてZootaxa誌に発表した。この研究成果については地元報道機関(西日本新聞社)に情報提供を行い一般への普及を行った。また、学名未決定であった水生甲虫類のうち、ヒメドロムシ科カラヒメドロムシ属については1種が未記載種であることが明らかになったため、キュウシュウカラヒメドロムシSinonychus tsujunensisとしてElytra New Series誌に発表した。この他、イシガイ科二枚貝類についても遠賀川水系において形態的に既知の種の特徴と完全に一致しないものが採集されたため、現在遺伝子解析を行って未記載種かどうかの調査を行っている。以上の分類学的研究を終了した後に改めて水系毎の種数を確定し、河川規模との関係を精査していく予定である。 また本研究により得られた成果の一部を活用して、行政文書である福岡県版生物多様性戦略冊子において県内の保全上重要な種・地域として紹介を行った。
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