研究課題/領域番号 |
23770035
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高林 厚史 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (90546417)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | タンパク質複合体解析 / 光合成 / プロテオーム / データベース |
研究概要 |
今年度は、シロイヌナズナの無傷葉緑体、その葉緑体のストロマ画分、シアノバクテリアPCC6803を材料として、BlueNative-PAGE (BN-PAGE)とLC-MS/MS解析を組み合わせた網羅的なタンパク質複合体解析を行った。その結果、シロイヌナズナの葉緑体で800以上、ストロマ画分で450以上、シアノバクテリアPCC6803株で1400以上のタンパク質が検出され、それらタンパク質群の複合体サイズが明らかになった。なお、シアノバクテリアPCC6803株においては、全タンパク質のおよそ40%が検出された。また、葉緑体においてもタンパク質の総数が2000程度と見積もられていることから、やはり全葉緑体タンパク質の40%以上のタンパク質が検出されたと予想される。なお、葉緑体の包膜画分については、現時点でショ糖密度勾配を用いた純度の高いサンプルの精製に成功しており、来年度に解析を行う予定である。また、データ公開のためのWebデータベースの開発に関しては、現在プロトタイプが研究室内LANで稼働しており、来年度中の正式公開を予定している。現段階では、遺伝子IDからの検索機能、サンプル名からのブラウズ機能、各タンパク質についてのprotein migration profileの表示機能などの使用が可能になっており、これによってユーザーは、興味のあるタンパク質の複合体の大きさを調べられるだけでなく、各複合体に含まれる可能性のあるタンパク質の候補リストを容易に得ることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定よりも早くWebデータベースの開発が進み、今年度中に当研究室内で試験運用が可能になったことは当初の期待以上の成果であった。すでにいくつか要望等が出ており、改善できる点については改善して、本公開につなげる予定である。また、これにより、データの可視化が容易に行えるようになったため、データ解析、すなわち未知タンパク質複合体の探索や新規サブユニット候補の探索についてもこのデータベースを用いることで捗るようになった。さらに、学会発表等を通じてこのデータベースに興味を持った研究者から、すでに解析データについての問い合わせが来ており、このデータベースの有用性について自信を深めている。 また、実験自体の進捗状況も基本的には当初の予定通りである。唯一、純度の高いシロイヌナズナ葉緑体の包膜サンプルを得ることには苦労していたが、これについても栽培条件や実験条件を工夫することで現在では高純度の包膜サンプルの単離に成功しており、来年度には解析可能である。また、来年度以降に行う予定の(単細胞)藻類サンプルについては、すでにストックセンターから取り寄せており、当研究室における培養にも成功している。さらに、いくつかの藻類においては、予備的な実験としてビーズを用いた破砕法で得たサンプルを用いてBN-PAGEを用いることで、タンパク質複合体の良好な分離プロファイルを得ており、当初の予定通りに解析を進められると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
シロイヌナズナの包膜画分の解析に加えて、ゲノムが明らかになっている、シアノバクテリア、および、褐藻、珪藻、緑藻などのモデル藻類、さらにモデル蘚苔類について、現在培養を進めており、それらを材料とした来年度以降の網羅的なタンパク質複合体解析についても、当初の計画通り進めていく予定である。 Webデータベースの公開については来年度中を目標とし、公開後は随時データを追加していく予定である。
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