研究課題/領域番号 |
23770035
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高林 厚史 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (90546417)
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キーワード | タンパク質複合体解析 / 光合成 / プロテオーム / データベース |
研究概要 |
本研究のテーマは、Blue-Native PAGEとLC-MS/MSを用いた解析により、光合成生物のタンパク質複合体の検出を体系的に行うことである。 まず、昨年までに解析を終えていたシロイヌナズナのチラコイド膜、およびシアノバクテリアPCC6803株についての解析データについては独自に構築したWebデータベース「PCoM-DB(Protein co-migration database for photosynthetic organisms):http://pcomdb.lowtem.hokudai.ac.jp/proteins/top」で現在公開中である。このデータベースを用いることでユーザーは自らの興味のあるタンパク質が複合体を形成しているかどうかを判断することができ、また複合体を形成していた場合には、相互作用する可能性のあるタンパク質群を容易に選抜することが可能である。今後このデータベースを利用した新たな発見がなされることを期待している。 同時に、陸上植物のヒメツリガネゴケ、緑藻のクラミドモナス、シアノバクテリアのプロクロロコッカスと新たなモデル光合成生物の解析もすでに行っており、今後はこれら生物種についてもデータの解析と公開を進めていきたい。また、これまでの解析から新規なタンパク質複合体候補を見出すことができた。現在、詳細な解析により、それら候補タンパク質同士が実際に相互作用しているかどうかについても検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はWebデータベースのプロトタイプを研究室内で運用していたが、今年度は「PCoM-DB(Protein co-migration database for photosynthetic organisms」を実際に公開にこぎつけることができた (http://pcomdb.lowtem.hokudai.ac.jp/proteins/top)。この公開データベース「PCoM-DB」の構築は本研究の大きな目的の1つであり、1つの山を越えたと考えている。データベースの機能としては、検索モードとブラウズモードのいづれかを用いて興味のあるタンパク質を選択し、その"protein migration profile"を見ることで、そのタンパク質の複合体情報が得られるようになっている。さらに、そのタンパク質複合体が存在する位置に同時に存在するタンパク質群のリストもすぐに得ることができ、それら候補タンパク質群の"protein migration profile"と興味のあるタンパク質の"protein migration profile"との比較も容易に行うことができる。これらの機能は当初から予定していた機能であり、それを今年度に実装することができた。 また、解析に関しては、当初の計画通り、シアノバクテリア、藻類、陸上植物、高等植物と様々なモデル光合成生物の解析がおおむね順調に進んでおり、次の解析サンプルの準備も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、Blue-Native PAGEとLC-MS/MSを用いて、様々なモデル光合成生物のタンパク質複合体の体系的な解析を行っていく予定である。なお、これまでの解析から、本研究の手法はとりわけ原核生物に対して非常に有力であることが明らかになってきた。これは予想外であったため、この結果を踏まえて、当初の予定よりも解析するシアノバクテリアの生物種類を増やす予定である。 また、現段階では、シロイヌナズナのチラコイド膜、およびシアノバクテリアPCC6803株の解析データのみ「PCoM-DB」で公開している。今後はさらにそれら生物の他の細胞内画分、および、他のモデル光合成生物の解析サンプルの公開を順次進めていきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の未使用額については、LC-MS/MS(機器)の一時的な故障のため、一部の解析が年度内に間に合わなかったため生じたものである。そのため、25年度のLC-MS/MS解析のランニングコストとして用いる予定である。
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