研究課題
緊縮応答はもともと細菌で発見、研究されてきた環境応答システムである。約半世紀前に発見され、その後の研究により、細菌に普遍的に保存された生育にほぼ必須の環境適応機構であることがわかってきている。この環境応答を担う分子が、特殊な核酸分子グアノシン4リン酸で、細菌が飢餓条件にさらされたような一時的に生育をストップさせる時に、その細胞内量が上昇する。ppGppはRNA合成酵素、翻訳因子、様々な代謝酵素に作用することでその活性を変化させることがわかっている。近年緊縮応答に関連した遺伝子が高等植物のゲノムに保存されていることがわかってきた。本研究では、この植物型の緊縮応答が植物の示す様々な高次機能をどのように制御するかのかに関して研究を行った。具体的には、シロイヌナズナに保存されている4つのppGpp合成酵素のいくつかを過剰に発現したシロイヌナズナの単離を進めた。また今年度は、それら組換え植物体の詳細な表現型解析を行うべく、昨年度に引き続きppGpp定量系の構築を進めた。その結果、4つのppGpp合成酵素の一つCRSHを過剰かつ任意の時期に発現を誘導できるラインの取得に成功した。また同様に、任意の時期にCRSHの発現をノックダウンできるラインの取得にも成功した。今後これらの得られたラインの解析を進めれば、植物における緊縮応答の生理機能を明らかにできると期待される。一方、ppGppの定量系に関しては、植物サンプル特有の細胞壁成分等からのppGpp分子の分画条件が未だ不完全で、確実な定量性を持たせたppGpp解析は行うことができていない。今後、植物由来のppGpp定量を行うことのできる実験系の構築を更に押し進め、得られた組換え体の解析を行うことができれば、植物型緊縮応答の生理的役割を明らかにできると期待される。
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Plant Physiology
巻: 163 ページ: 291-304
10.1104/pp.113.220129