研究課題/領域番号 |
23770040
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 友美 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10362435)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 光受容体 / 情報伝達 / 青色光 |
研究概要 |
植物は光合成によって光エネルギーを利用して空気中のCO2からデンプンなどの炭水化物を合成する。そのため光合成効率の向上は、炭素固定による食料生産性の向上だけでなく、温室効果ガスの一つであるCO2の吸収など地球規模の環境改善に繋がると考えられる。光合成に必要な光はクロロフィルによって受容される一方、光の種類や強弱などの光環境はフィトクロム、クリプトクロム、フォトトロピンなどの光受容体によって感知されることが知られている。光受容体の中でも青色光を受容するフォトトロピンは、「葉緑体定位運動・光屈性・気孔開口・葉の偏平化」など光合成の効率化に寄与する応答に関わっているが、その詳細な分子機構に関しては未だ明らかとなっていない。 この応答の分子機構を明らかにする過程で、フォトトロピンと相互作用する因子として小胞輸送関連因子ARF1を取得した。本年度は、(A)植物ARF1の役割解明、(B) 青色光による小胞輸送制御、(C) フォトトロピン情報伝達系の解明、の3つの研究項目を設定し、各々について解析を進めた。(A)及び(B)に関しては、形質転換植物・生化学的解析用のタンパク質など研究材料の準備、及び解析のための条件検討を主に遂行した。情報伝達系の解明に向けた(C)の研究では、リン酸化基質のプロテオーム解析、変異源処理による遺伝学的スクリーニング、などの解析を行うことで、情報伝達系の候補因子の取得に成功した。 生体分子の輸送を担う小胞輸送は生物において重要な生命現象であり、植物だけでなく生物学全般において最も注目される現象の一つである。生物のホメオスタシスの維持に重要な役割を担っている小胞輸送が、光環境刺激によって調節を受けるという概念は非常に興味深く、本研究課題を遂行することにより、フォトトロピン情報伝達機構の解明だけに留まらない生命現象の解明に貢献できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生化学的解析用に、リコンビナントタンパク質の発現・精製を計画していた。しかし、精製条件の検討が難しく、当初の計画に比べやや遅れている解析がある。しかし、全体としては概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画したように、本研究課題では大腸菌、酵母、植物など他種類の生物を目的に応じて駆使することで、生化学的解析や変異遺伝子取得などを効率的かつ効果的に進める。条件検討の段階で遅れた生化学的解析については、解決策を既に見出しており、その方策に沿って解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画にある大規模スクリーニングに関しては、培地・資材などの消耗品も多く要するが、それ以上に労力を要する。解析を迅速に遂行するためには実験補助が必要となる。次年度の研究費としては、主に消耗品と謝金に使用する計画である。
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