高等植物では、メリステムのような無限成長する組織から、葉や花などの有限成長する器官が生じる。これら2種類の成長を制御することが植物の体制維持機構の特色である。本研究では、無限成長から有限成長へ転換する分子機構を明らかし、その転換を遺伝子工学的に制御することを目的にしている。そのために、シロイヌナズナのTCP転写因子遺伝子ファミリーの欠失変異体が葉の縮れ形態とメリステム遺伝子の葉における異所発現誘導を示すことに着目し、TCP転写因子ファミリーの包括的な機能解析、ならびにそれらの下流遺伝子の解析を行ってきた。 本年度は、TCP転写因子の下流で機能するERFファミリー転写因子の機能を明らかにした。具体的には、相同な5つのTCP遺伝子が多重に破壊されたtcp変異体が老化遅延すること、ならびに転写抑制活性を示す相同なAtERF4とAtERF8がtcp変異体で遺伝子発現が減少することを明らかにした。さらに、それらERF遺伝子の過剰発現が葉の老化を促進すること、逆に、aterf4 aterf8二重変異体は葉の老化遅延を示すことを明らかにした。AtERF4とAtERF8の下流遺伝子を探索するために、遺伝子発現実験とクロマチン免疫沈降法などを用いて、AtERF4とAtERF8が老化の鍵制御遺伝子であるESP/ESR遺伝子を直接制御することを明らかにした。これらの解析からTCPを起点とし、ERF転写因子を介した葉の老化制御系の存在を明らかにし、葉の有限成長の最終段階において機能する情報伝達系の一端を解明することができた。 さらに、本年度は有用植物の成長転換制御の基盤として、タバコ光独立栄養細胞から確立された細胞株の形質転換系構築を目指し、コントロールであるGFPを本細胞株に再現性よく効率的に導入することができ、今後の研究へ展開可能な実験基盤を構築した
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