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2011 年度 実施状況報告書

新奇の色素体分裂機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23770046
研究機関岡山大学

研究代表者

松島 良  岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (80403476)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード澱粉 / イネ / 胚乳 / 種子 / 登熟 / 突然変異体
研究概要

色素体は、約20億年前のシアノバクテリアの共生に由来する植物オルガネラであり、組織や器官に応じて様々なタイプに分化して独自の役割を担う。宿主である植物細胞が色素体の大きさと数を制御することは、共生関係を成立させるために必須であり、光合成を担う色素体である葉緑体を中心に分裂制御機構に関して多くの研究が進められている。 アミロプラストは色素体の分化型の1つで、貯蔵器官において澱粉を集積する役割を担う。アミロプラストの分裂制御機構は、他の色素体 (葉緑体)のものとは異なることが予想されているが、その詳細は不明である。本研究ではこれまで全く未知であった「アミロプラストの分裂制御機構」の解明を目指している。 本年度は、研究代表者が独自に単離したアミロプラストが巨大化するイネ新奇突然変異体、"ssg4変異体"と"ssg6変異体"を研究対象とし、アミロプラストの分裂制御機構に関して新知見を得た。 具体的にはまず、ssg4変異体の原因遺伝子の単離とそのコンプリメンテーション実験に成功した。その結果をふまえて、SSG4遺伝子の機能解析実験(発現解析と細胞内局在解析)を開始した。さらに、ssg4変異体の細胞レベルの詳細な顕微鏡観察ならびに圃場における個体レベルの農業形質(出穂期、稈長、穂長、穂数、一穂粒数、不稔粒数、全穂重、100粒重)の評価を行った。顕微鏡観察に関しては、登熟胚乳におけるアミロプラストの発達過程を明瞭に経時観察することに成功し、ssg4変異の作用時期を明らかにした。農業形質の評価に関しては、ssg4変異体に出穂期と稈長に有意な表現型を見出す事ができた。ssg6変異体に関しては、ラフマッピングにより染色体の座乗位置の特定を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該研究所の圃場におけるイネの育成は一年一作であり、本年度は夏場の天候にも恵まれ、圃場実験に関しては予定した計画を概ね実施することが出来た。また、冬場には保存しておいた乾燥種子の胚乳に関する実験を集中的に行うことにより、効率的に実験計画を進めることが出来た。 実験内容に関しては、ssg4変異体の原因遺伝子の同定に成功したことは大きな前進である。SSG4遺伝子の塩基配列特異性やWeb情報の間違いによりSSG4遺伝子のクローニングには大変苦労したが、本年度内に達成する事ができた。SSG4遺伝子はどの植物種においても機能未知のタンパク質をコードしており、新奇の色素体分裂制御機構に関与している可能性が高いと考えている。発現解析ならびに細胞内局在解析のための予備実験は済んでおり、来夏における本実験の効率的な実施の準備は完了している。 ssg4変異体の表現型解析に関しては、登熟胚乳の固定条件を検討し、アミロプラストの明瞭観察のための条件の最適化を行った。登熟胚乳のアミロプラストの発達過程を捉えた美しい写真を撮影できたと自負している。また細胞レベルの表現型をもとに単離したssg4変異体に個体レベルの農業形質に表現型が現れる事は予想外であったが、興味深い結果だと考えている。SSG4遺伝子の胚乳以外の組織における機能を考える際に、指針となるからである。 ssg6変異体に関しては、ラフマッピングまでしか行えず、ファインマッピングは来年度以降に持ち越しになってしまった。この点は反省すべき点である。

今後の研究の推進方策

(1)SSG4の機能解析SSG4遺伝子の機能解析を進め、SSG4がどのようにアミロプラストの分裂制御機構に関与しているのかを明らかにする。具体的には、時空間的な発現部位の把握、細胞内局在性の同定を目指す。これらの実験に必要な予備実験や形質転換体の作成は本年度に完了している。また本研究では、胚乳のアミロプラストの大きさについての種間多様性に注目する。特に イネ科植物でアミロプラストの大きさが大きく異なる植物種に注目する。既に研究代表者は、そのような植物種を同定しており、今後、そのような植物種からSSG4遺伝子のクローニングを行い、塩基配列の比較解析を行う。アミロプラストの大きさの種間多様性がSSG4遺伝子の塩基多様性と相関があるのかを調査し、SSG4遺伝子の種間多様性における役割について考察する。(2)SSG6遺伝子のクローニング本年度に行ったラフマッピングに引き続き、ファインマッピングを行い、SSG6遺伝子のクローニングを行う。必要な交配集団は、作出済みである。(3)ssg4変異体ならびに多重変異体の表現型解析ssg4変異体ならびに、研究代表者がこれまでに単離した他のssg変異体との多重変異体を作出し、表現型解析を進める。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度は、研究費の大半を消耗品として使用する予定である。具体的には、以下の研究項目において用いる。(1)SSG4の機能解析のための使用計画 → 時空間的な発現部位の把握、細胞内局在性の同定のための消耗品。形質転換体の作出のための外部委託費用。塩基配列決定のための試薬類。(2)SSG6遺伝子のクローニング → マッピングのための分子生物学的な試薬、消耗品。(3)ssg4変異体ならびに多重変異体の表現型解析 → 植物育成のための器具、消耗品。顕微鏡観察のための試薬類。その他、年3回ほどの研究集会、学会参加を計画しており、そのための旅費として使用を計画している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2011 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] A conserved, Mg2+-dependent exonuclease degrades organelle DNA during Arabidopsis pollen development.2011

    • 著者名/発表者名
      Matsushima R., Tang L. Y., Zhang L., Yamada H., Twell D., Sakamoto W.
    • 雑誌名

      Plant Cell

      巻: 23 ページ: 1608-1624

    • DOI

      10.1105/tpc.111.084012

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Interaction between Phaseolus plants and two strains of Kanzawa spider mites.2011

    • 著者名/発表者名
      Ozawa, R., Matsushima, R., Maffei, M. E., Takabayashi, J.
    • 雑誌名

      Journal of Plant Interactions

      巻: 6 ページ: 125-128

    • DOI

      10.1080/17429145.2010.544922

    • 査読あり
  • [学会発表] 胚乳の澱粉粒の形状決定に関する分子細胞生物学的研究2011

    • 著者名/発表者名
      松島 良・前川雅彦・藤田直子・山下純・坂本亘
    • 学会等名
      第120回日本育種学会秋期大会
    • 発表場所
      福井県立大学
    • 年月日
      2011年9月24日
  • [学会発表] 胚乳の澱粉粒の形状決定に関する分子細胞生物学的研究2011

    • 著者名/発表者名
      松島 良・前川雅彦・藤田直子・山下純・坂本亘
    • 学会等名
      日本応用糖質科学会中国・四国支部平成23年度シンポジウム(招待講演)
    • 発表場所
      福山大学
    • 年月日
      2011年11月18日
  • [備考]

    • URL

      http://www.rib.okayama-u.ac.jp/index-j.html

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公開日: 2013-07-10  

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