研究課題
ssg4ならびにssg6変異体は、胚乳のアミロプラストが野生型よりも著しく巨大化するイネの突然変異体であり、研究代表者が独自の方法で単離した新奇の突然変異体である。これまでに、SSG4遺伝子の同定とSSG6遺伝子の大まかな遺伝子座乗位置の確認に成功している。SSG4遺伝子は、機能未知のタンパク質をコードしており、他の植物種のホモログにおいても機能解析が例がない、全く新奇の遺伝子だった。当該年度では、①SSG4遺伝子の組織別発現解析 ②SSG4タンパク質の細胞内局在性解析 ③胚乳以外の組織におけるアミロプラストの形状の観察 ④マイクロアレイ解析によるssg4変異体で発現が変化している遺伝子の同定を進めた。⑤ssg6遺伝子のマッピングを進め、候補遺伝子を29個に限定できた。①に関しては、登熟初期の種子 (3日目から7日目)、葉(第3葉と止め葉)、葯(花粉)、雌しべ、幼穂などからtotal RNAを抽出し、リアルタイムPCR法によりSSG4遺伝子の発現組織を同定することに成功した。特に登熟種子で高い発現を確認できた。②ではSSG4遺伝子の完全長cDNAの単離に成功し、GFP融合タンパク質を用いて細胞内の局在性を調べた。その結果、SSG4タンパク質はアミロプラストに局在することが分かった。③では、花粉や根冠に存在するアミロプラストの形状も、ssg4変異体では変化していることが分かった。④ マイクロアレイ解析に関しては今年から開始した状態であり、条件検討や解析ソフトの立ち上げが完了した。ssg4変異体の解析に関しては学会発表を数回行っており、日本育種学会より優秀発表賞を授与された。
2: おおむね順調に進展している
SSG4遺伝子は単離当初は、機能も特徴も全く不明な遺伝子であった。本研究の現在までの解析により、SSG4の"時空間的な発現部位の同定"や"細胞内局在性"を明らかにする事ができている。しかしながら、SSG4タンパク質の機能は、新奇の色素体(アミロプラスト)分裂制御機構に関与している可能性が高いが、その詳細は未だ不明である。本研究では現在までに、SSG4が影響を及ぼす遺伝子群を網羅的に同定できるシステム(マイクロアレイ解析)の構築を開始しており、今後の解明が期待できる。ssg4変異体の解析に関する研究成果は、予定通り学会発表を行っており、原著論文も執筆中である。ssg6変異体に関しては、候補遺伝子の同定までに至っていない。この点は、反省すべき点である。
① SSG4遺伝子が発現影響を与える遺伝子群の同定→マイクロアレイ解析を行い、SSG4遺伝子が影響を及ぼす遺伝子群を同定する。この遺伝子群の特徴からSSG4遺伝子の機能を考察する。具体的には、登熟種子や葉に存在するtotal RNAを野生型とssg4変異体から単離して比較する。予備実験や予備解析に関しては、既に実施している。② SSG6遺伝子の単離→候補原因遺伝子が29個まで限定しているが、原因遺伝子の同定に至っていない。そこで、登熟種子においてマイクロアレイ解析を行い、野生型に比べてssg6変異体において発現が低下している遺伝子群を同定する。この遺伝子群と29個の候補遺伝子とを比較し、原因遺伝子の絞り込みを行う。③ 研究成果の原著論文の発表→ssg4変異体の表現型の解析ならびにSSG4遺伝子の機能解析について、論文発表を行う。
平成25年度は、研究費の大半を消耗品と論文投稿費として使用する予定である。具体的には、マイクロアレイ解析のための試薬代、消耗品に使用する。また、論文作成のための校正費、投稿費用にあてる。その他、年2回の研究集会、学会参加を計画しており、そのための旅費として使用を計画している。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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