研究課題
葉緑体やミトコンドリアなどの細胞内小器官が正しくその代謝機能を発揮するためには、正しく物質を運び込む物質輸送体の存在が必須である。ピルビン酸は細胞質での解糖系で生じ、ミトコンドリアでTCA回路によって分解されるもっとも基本的なエネルギー代謝を支える物質であり、葉緑体においてもイソプレノイド合成や分岐鎖アミノ酸などの合成に必須な代謝物質である。この重要性にも関わらず、オルガネラ膜状に存在し、このピルビン酸輸送を支える分子実体は明らかではない。今回、我々は、C4光合成とC3光合成との間で、葉緑体においてピルビン酸輸送能に機能的違いがあることを利用し、トランスクリプトーム解析からC4植物に高発現し葉緑体局在を推定させる輸送分子、BASS2、BASS4、NHD1を見出した。なかでもBASS2とNHD1がナトリウムイオンを共役させたピルビン酸取り込み活性関与する分子実体であることを明らかにした。BASS4は維管束鞘細胞において機能するリンゴ酸取り込みあるいはピルビン酸排出機能を担うと考えられた。本年度は、我々が開発した輸送機能解明のために必須な実験ステップである、大腸菌でのBASS4発現系の構築に成功し、いよいよ物質輸送機能の測定に取り掛かる準備が完了した。
2: おおむね順調に進展している
大腸菌での異種発現系の構築に手間取ったが、本年度中にこれを構築できた。24年度における実験準備としては十分であるので、この進展状況に問題はない。
BASS2での機能解析にならい、BASS4を組み換えた大腸菌を用い、リンゴ酸あるいはピルビン酸の輸送活性を測定する。抗体を入手しているので、葉からの抽出タンパク質での検出が可能かどうかを検討し、可能であれば、組織特異性や細胞内局在性の検討を行う。
放射標識ピルビン酸や、放射標識リンゴ酸の購入に充てる。比較的高価な化学物質であり、この予算規模でなければ購入できない。BASS2に準じ、国際発表や論文発表を行い、それらに使用することを予定している。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Nature
巻: 476 ページ: 472-475
10.3390/ijms14035312