研究課題/領域番号 |
23770050
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
山田 健志 基礎生物学研究所, 高次細胞機構研究部門, 助教 (00360339)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 小胞体 / ERボディ / シロイヌナズナ / βグルコシダーゼ / 傷害 / 病原菌 / オルガネラ / 膜タンパク質 |
研究概要 |
ERボディはアブラナ科植物にみられる小胞体由来の構造物である.シロイヌナズナにおいて,ERボディは根や幼植物体の表皮に蓄積する.シロイヌナズナの変異体を用いた解析から,転写制御因子であるNAI1,ERボディに局在するNAI2,ERボディの主要成分であるβグルコシダーゼ,PYK10がERボディ形成に必要であることを明らかにしてきた.さらに,ERボディ特異的な膜タンパク質として,MEB1,MEB2を見いだし,ERボディの膜は小胞体と異なる膜タンパク質により構成されていることを明らかにした.ロゼット葉において,ERボディは傷害により誘導されることから,ERボディは虫害や病害に対する防御のためのオルガネラであると考えられているが,その実体は不明である.そこで,ERボディの機能を明らかにするため,ERボディ欠損変異体の病害抵抗性の解析を行った.ERボディを形成しないnai1,nai2変異体やERボディ膜に異常があると思われるmeb1 meb2二重変異体を用いて,Pythium sylvaticum, Fusarium oxysporumなどの植物病原菌への感染効率を調べた.その結果,野生株と変異体において感染効率には大きな変化が見られず,これらの病原菌に対する抵抗性にERボディが関与する可能性は低いと思われた.PYK10はスコポリンを基質としてスコポレチンを生成する.そこで,Pseudomonas syringae, Agrobacterium tumefaciensなどのバクテリアの生育に対するスコポレチンの影響を調べた.その結果,Agrobacterium tumefaciensの生育がスコポレチンによって抑制されることがわかった.このことから,ERボディはAgrobacterium tumefaciensの感染防御に働いていることが考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではERボディの形成と機能に関わる因子に着目し,これらの因子がどのようにして,植物特有の小胞体の機能分化と生体防御系の発達に関わるかを明らかにすることを目標としている.これまでの研究から,ERボディ形成因子としてNAI1,NAI2 ,PYK10 を同定し,さらにERボディ膜の形成に働くMEB1,MEB2を発見することができ,ERボディ形成の実態が明らかになりつつある.さらに,スコポレチン感受性の病原菌を調べることで,ERボディを利用した防御機構を明らかにする手がかりを見つけ出すことができたため,順調に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,変異体を用いたバクテリアに対する罹病性,in vitro系によるERボディ形成,アブラナ科以外の異種植物におけるERボディ形成の可能性などについて研究を行うことで,ERボディを利用した防御機構を明らかにしつつ,得られた成果を論文や学会発表によって発信していくことを考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は高価な試薬を用いた分子生物学的,細胞生物学的解析を行うとともに,成果発表のための経費などにより,本年度以上に研究費が必要と思われる.本年度未使用の研究費と合わせた次年度の研究費は,それらの経費として使用することを計画している.
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