研究概要 |
ERボディはアブラナ科植物にみられる小胞体由来の構造物である.シロイヌナズナにおいて,ERボディは根や幼植物体の表皮に蓄積する.シロイヌナズナの変異体を用いた解析から,転写制御因子であるNAI1,ERボディに局在するNAI2,ERボディの主要成分であるβグルコシダーゼ,PYK10がERボディ形成に必要であることを明らかにしてきた.さらに,ERボディ特異的な膜タンパク質として,MEB1,MEB2を見いだし,ERボディの膜は小胞体と異なる膜タンパク質により構成されていることを明らかにした.MEB1,MEB2の機能を明らかにするために,まず,meb1 meb2二重変異体における,ERボディ形成を調べた.その結果,meb1 meb2二重変異体では,野生株と同じくERボディの形成にはほとんど変化がなかった.MEB1,MEB2は酵母の鉄・マンガンイオン輸送体であるCCC1と相同性がある.酵母のccc1変異体は鉄・マンガン感受性を示す.そこで,酵母のccc1変異をMEB1,MEB2遺伝子により相補できるかどうか調べたところ,MEB1,MEB2双方ともccc1変異による鉄・マンガン感受性を相補することが明らかとなった.このことから,MEB1,MEB2は鉄・マンガンイオン輸送体として働くことが明らかとなった.ERボディが病原菌だけでなく金属イオンストレスに対する抵抗性に働く可能性が考えられた.meb1 meb2二重変異体を用いて,Pseudomonas syringae,Pythium sylvaticum, Fusarium oxysporumなどの植物病原菌への感染効率を調べた.その結果,野生株と変異体において感染効率には大きな変化が見られず,これらの病原菌に対する抵抗性にMEB1,MEB2が関与する可能性は低いと思われた.
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