研究課題
植物の木部道管は、水や無機塩類の通道組織として、また植物体の自立を助ける支持組織として、植物の生育に不可欠な組織である。木部道官を構成する道管細胞は、周囲に硬く厚い二次細胞壁を形成し、またプログラム細胞死により内容物を消失して中空の構造になるという特徴がある。しかし、これら道管細胞分化過程を制御する仕組みは、不明な点が残されていた。当研究室ではこれまでに木部道管細胞分化のマスター制御因子としてNAC転写因子VND7を同定しており、このVND7を人為的に機能誘導することにより高頻度かつ同調的に様々な植物組織・器官の細胞を木部道管様細胞へ分化転換させることが出来る実験系を確立している。本研究ではこの道菅分化誘導系を用いて、分化率や二次細胞壁の形成に変化を起こす新奇生理活性小分子化合物のケミカルスクリーニングを行った。その結果、道菅様細胞への分化率を変化させる物、二次細胞壁の形成に異常を引き起こす物など、多数の候補化合物を得ることが出来た。その中でも、サルフォンアミド類に属するサルファメチゾールは、本来らせん模様を形成する原生木部道管の二次細胞壁に、多数の分岐や湾曲をもたらすという二次細胞壁形成に対する新規の生理活性を示した。その作用機序を解析したところ、木部道管細胞分化過程特異的に微小管束を湾曲・分岐させることを見い出した。このことから、サルファメチゾールは原生木部道管形成時に微小管の配向を制御する因子に対する阻害剤であると考えられる。そして、サルファメチゾールは木部道管細胞における二次細胞壁形成機構を研究する上で有用なツールになると期待される。
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Plant and Cell Physiology
巻: 56 ページ: 242-254
10.1093/pcp/pcu134
http://bsw3.naist.jp/demura/