研究課題/領域番号 |
23770058
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
深澤 壽太郎 独立行政法人理化学研究所, 促進制御研究チーム, 研究員 (90385550)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ジベレリン / 信号伝達 / 翻訳後修飾 / 転写因子 |
研究概要 |
GA信号伝達においてDELLAタンパク質とSPYタンパク質は、抑制因子として知られている。DELLAタンパク質は、機能未知の核タンパク質であり下流の信号伝達を抑制している。GA投与によりDELLAタンパク質が速やかに分解され抑制が解除されることでGA応答が誘引される。また、SPYタンパク質は、その構造からGlcNAc転移酵素としての機能が予測されているが、具体的な標的タンパク質が明らかになっておらず、その機能は明らかとなっていない。両タンパク質は、共に抑制因子として機能することが知られており、遺伝学的な解析から、DELLAタンパク質の機能制御にSPYタンパク質が必要であると考えられてきた。しかし、DELLAタンパク質とSPYタンパク質は、相互作用しないことから両タンパク質の関係は未だに明らかになっていない。 DELLAタンパク質の相互作用因子GAF1の単離に成功しDELLAタンパク質が、GAF1と相互作用することによって、下流の標的遺伝子の制御を行っていることを明らかにしてきた。本年度は、GAF1複合体には、DELLAタンパク質のみならず、SPYタンパク質も含まれることを明らかにした。また、植物細胞を用いたトランジェント解析により、SPYタンパク質の共発現は、DELLA-GAF1による転写活性化を促進することが明らかとなった。GA信号伝達においてDELLAとSPY両タンパク質は、GAF1複合体において同一複合体に存在することで、転写活性化複合体の形成に関与し、GA信号伝達を制御すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DELLA-GAF1複合体にSPYタンパク質も存在し、転写の活性化を正に制御できることを明らかにした。この結果は、SPYタンパク質が、DELLAタンパク質とともにGA信号伝達の抑制因子として働き、DELLAタンパク質の機能制御にSPYタンパク質が必要であるといった遺伝学的な解析結果を支持するものである。また、SPYの共発現によりDELLA-GAF1複合体の転写活性化能が変化することから、SPYによるGlcNAc修飾の標的が、DELLA-GAF1複合体であることを間接的に示している。この実験系の確立は、今後のSPYによるGlcNAc修飾の修飾部位の同定、修飾の生物学的な意義を検討するうえで有効な実験手法となると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
E.coli , yeast 等の GlcNAc 転移酵素を持たない発現系に、SPY及び、GAF1/ DELLAを共発現させ、放射標識されたUDP-GlcNAc を供与体としてGAF1/ DELLAタンパク質への取り込みを検証する。SPYタンパク質によるGlcNAc修飾が確認された場合、Ser / Thrに対するAla スキャニングを行い、修飾部位を同定する。 in vitro 系のメリットは、内在性のGlcNAc酵素が存在しないこと、また、多種類のAla変異タンパク質の導入が容易であり、実験系の確立は、修飾部位の同定を可能にする。しかし、リン酸化、GlcNAc修飾等がSPYの酵素活性自体にも必要である場合等、SPYの酵素活性の再現が困難であることも予想されるため、in vivo 系の確立も平行して行う。in vitro 系の確立に成功した場合、SPYによる修飾部位の特定をGAF1/DELLAタンパク質のSer/Thrに対するAlaスキャニングにより同定する。複数箇所にGlcNAc修飾が起きている場合は、AlaスキャニングによるGlcNAc修飾部位の同定が困難であるのでGlcNAc修飾の認められたタンパク質に関して、MALDI-Tof mas 解析を行い、修飾部位の同定を行う。in vivo 系によりGAF1/DELLAタンパク質のGlcNAc修飾が確認された場合は、付加したMyc,及びFlagタグによりGAF1/DELLAタンパク質を精製し、MALDI-Tof mas 解析により修飾部位を同定する。GlcNAc修飾部位を明らかにした後、Ser / Thr をAla に置換したGlcNAc修飾を受けないmtGAF1/mtDELLA(Ala)変異体を作製し、SPYによるGlcNAc修飾の生物学的な意義を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H23年度は、植物培養細胞を用いたトランジェント解析によるSPYタンパク質の共発現による転写活性化能の評価、酵母を用いた結合領域の同定等の解析を行った。これらの研究手法は、DELLA-GAF1 の機能解析と並行して研究を行うことができたため、新たな研究試薬等をそれほど購入することなく研究が遂行できたため、消耗品費等を節約でき次年度にH23年度未使用分(次年度使用額1,307,629円)を使用することとした。H24年度から、申請者は広島大学に移籍し、大学院生、学部生とともに研究を進める。in vitro 系、または、in vivo系SPYによるGlcNAc 修飾系の確立し、SPYによるGlcNAc修飾部位の同定を行う。この研究推進のために、変異タンパク質作成のための合成オリゴマーの作製、放射標識されたUDP-GlcNAc、GlcNAc修飾を検出するモノクローナル抗体といった消耗品費に多くを投入する。また、SPYによって修飾されたタンパク質を用いて、MALDI-Tof mas解析によるGlcNAc修飾部位の同定にも使用する。H24年度は、大学院生、学部生の研究人員の増加と、GlcNAc修飾部位同定のために試薬購入等で、前年度よりも多くの消耗品費の支出が見込まれることから、H23年度の持ち越し分とH24年度の研究費の多くを消耗品費に使用する。また一部を学会等の出張費に使用予定である。
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