今後の研究の推進方策 |
ミオシンXI-2以外にも、原形質流動の動力と考えられるミオシンメンバーの存在が複数示唆されている(XI-1, XI-B, XI-I, XI-K)。これらのミオシンメンバーのマルチノックアウトが植物体の成長あるいは根毛やtrichomeの先端成長に阻害的な影響を与えることから、それぞれの駆動力が植物成長に重要な働きを持つことが示唆されている(Peremyslov et al., 2010, Plant Cell)。しかしながら、ノックアウト解析のみではミオシンメンバー個々の機能解明は限定的である。今後、XI-2以外のメンバーの速度改変型を作製し、植物体で発現させる。表現型やイメージングによる詳細な比較解析を行い、メンバーの機能分担様式や、それらが植物成長や形態形成に及ぼす影響を明らかにする。同時に、成長関連物質への影響を解析することで、原形質流動速度と植物成長の関連を明らかにしていく。また、Promoter-GUS解析から花粉特異的に発現するミオシンを数種類同定した。花粉管の伸長やガイダンスには複雑なシステムが存在する (Cheung and Wu,2008,Annu.Rev.Plant Biol.)。ミオシンが駆動力のみならず重要な制御因子として花粉特異的に進化した可能性が考えられる。花粉特異的メンバーの速度改変型を発現させ、伸長やガイダンスに与える影響を解析する。解析を行ったミオシンメンバー変異体に関して、最終的に得られた細胞レベルでの輸送異常と高次機能における表現型異常を体系的に関連させ、統合的解析を行う。経路を遮断しない速度改変による解析から、細胞内交通と高次機能を結びつけることができる新規情報が得られると考える。加えて、植物高次機能におけるモーター固有の速度に関する議論も展開していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度では、ミオシンXI-2においてキメラミオシンの植物での発現に成功したことから、詳細な表現型解析を行うための研究設備に研究費を拠出した。キメラミオシンの発現系に目途が立ったことから、次年度では他のミオシンメンバーにおける本実験系の適用を計画した。多数のミオシンメンバーにおいて高速化あるいは低速化を行うため、コンストラクト作製や形質転換植物の作製には非常に時間と労力を必要とする事が予想された。それを克服するために、平成23年度予算から、1,177,827円をH24年度における研究補助員のための人件費とそれに伴う消耗品費として拠出することで研究の促進を計る予定である。
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