研究課題/領域番号 |
23770069
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研究機関 | 公益財団法人サントリー生命科学財団 |
研究代表者 |
関口 俊男 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所, 研究員 (40378568)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ナメクジウオ / Calcitonin / Calcitonin receptor / RAMP / 比較内分泌学 |
研究概要 |
Calcitonin (CT) family ぺプチド(CT, CGRP, Adrenomedullin, amylin, CRSP)は、多様な機能をもつ。これらのペプチドは、共通祖先に由来すると考えられている。受容体であるCT 受容体 (CTR)とCTR 様受容体(CRLR)は、祖先を同じくする相同性の高いGPCR で、そのリガンド特異性は、1 回膜貫通型の受容体活性修飾蛋白(RAMP)との共役によって規定されている。報告者は、脊椎動物の祖先的生物であるナメクジウオを用い、1) CT family ペプチドの起源を解明すること、2) CTRとRAMP について、その細胞局在とリガンド選択性について解析し、CTR 及びRAMP の起源となる機能を解明することを目標とし研究を遂行した。 初めに、ナメクジウオゲノムから CT family のペプチド(Bf-CT)を3種同定し、その遺伝子を単離した。さらに1種の CTR(Bf-CTR)、3種のRAMP(Bf-RAMP)をそれぞれ同定・単離した。平成23年度は、主にペプチドについて研究した。Bf-CTの配列を解読、脊椎動物CT family との比較を行った結果、CT 及びCGRPの両方の特徴を持っていることを明らかにした。さらにこれらのペプチドを合成し、破骨細胞をもつ魚類鱗培養系に添加した結果、魚類CT と同じ破骨細胞抑制活性を持つことを示し、脊椎動物 CTRに作用することを突きとめた。さらに in situ hybridization を用い、ナメクジウオにおける発現局在を検討した結果、全てのBf-CT が脳胞に、Bf-CT2 は消化管にも局在することを明らかにした。さらに、Bf-CTR と Bf-RAMPを発現させた細胞に、Bf-CTを投与すると、ペプチドの結合により誘起されるcAMPセカンドメッセンジャーの上昇を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
合成 Bf-CTペプチドが、脊椎動物に対し CT 活性を持つことを明らかにし、脊椎動物 CT family の祖先ペプチドであることが強く示唆された。このように本研究の目的の一つであるCT family ペプチドの起源解明という目的を達成する上で重要な知見が得られた。さらに、Bf-CTR とBf-RAMPの活性測定系を確立し、今後、これらの機能について詳細な解析が可能であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、申請書に記載した計画どおり、Bf-CTR とBf-RAMPの機能を対象にした研究を、以下の2つの方針に沿って進める。方針の1つは、Bf-CTRとBf-RAMPの組み合わせとリガンド特異性の関係に対する解析で、もう1つは、Bf-RAMP の Bf-CTR に対する細胞膜移行活性解析である。脊椎動物において、CTR とRAMPの組み合わせが CT family ペプチドの特異性を決定する上で重要であることが知られている。3種類存在するBf-CTの特異性が、脊椎動物と同様の機構で決定されているかどうかを検討するために、COS7細胞に Bf-CTR と Bf-RAMPを発現させて、Bf-CTを投与した際の cAMPセカンドメッセンジャーの活性を測定する。また脊椎動物のRAMPは、CRLR を細胞膜に移行するシャペロンとしての活性をもつ。CRLRは、RAMPなしでは、細胞膜に移行できずに小胞体で留まっている。Bf-RAMPがこのような細胞膜移行活性をもつかどうかについて、免疫細胞化学による解析と、フローサイトメーターによる解析を行う。免疫細胞化学による解析では、N末にタグを融合させたBf-CTR又は Bf-RAMPを発現した COS7細胞(N末標識細胞)に対し、抗体が細胞内に浸透しないよう界面活性剤を使用せずに、タグ抗体による免疫細胞化学を行なうことで、Bf-RAMPに細胞膜移行活性の有無を検討する。フローサイトメータ-による解析では、N末標識細胞をタグ抗体により蛍光標識し、フローサイトメーターを用い、Bf-CTR とBf-RAMPの組み合わせによる細胞膜移行活性の相関性について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「Bf-CTRとBf-RAMPの組み合わせとリガンド特異性の関係に対する解析」では、cAMPセカンドメッセンジャーを測定するキット(400千円)を購入する予定である。また細胞培養用の培養液等の試薬(350千円)、プラスティック器具(200千円)が必要である。「Bf-RAMP の Bf-CTR に対する細胞膜移行活性解析」では、さらにフローサイトメーター解析に使用する試薬(500千円)を購入する。そして、成果が出次第、論文を作成する予定であり、別刷り代(100千円)を必要とする。
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