研究課題/領域番号 |
23770070
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
風間 裕介 独立行政法人理化学研究所, 生物照射チーム, 基礎科学特別研究員 (80442945)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 植物 / 加速器 / 重イオンビーム / 性決定遺伝子 |
研究概要 |
雌雄異株植物ヒロハノマンテマの性は、哺乳類と同じXY型の性染色体で雌雄が決まる。Y染色体には3つの雄性決定機能領域が予測されており、(1)雌蕊発達抑制機能領域(GSF)、(2)雄蕊伸長促進機能領域(SPF)、(3)葯成熟促進機能領域(MFF)と呼ばれる。これらの性決定遺伝子の同定に向けて、申請者はこれまで、理化学研究所のリングサイクロトロンで加速した重イオンビームをヒロハノマンテマに照射し、 (1)を欠失する両性花、(2)を欠失する無性花、(3)を欠失する雄蕊葯不全花の変異体ラインからなる「Y染色体欠失・性転換変異体ライブラリ」を整備してきた。また、Y染色体STSマーカーを用いて無性花変異体6個体の欠失領域を調査し、6個体すべてで欠失する領域を求めることで、SPF雄性決定遺伝子がScQ14とSmixy6という2つのマーカー間に存在することを明らかにしている。 Y染色体欠失・性転換変異体ライブラリを拡充するため、炭素イオンビームを花粉に最適線量(20Gy)で照射し、人工受粉して後代種子を得、1000個体を圃場で栽培して選抜を行った。現在スクリーニングを進めている。 SPF性決定候補領域のゲノム配列を解読するため、雄のヒロハノマンテマ由来のBACライブラリー(平均インサートサイズ115 kb、130,000クローン)の構築をゲノム支援に依頼し、現在までに平均インサートサイズ105 kb、46,000クローンからなるパーシャルBACライブラリーの構築を完了した。また、SPF性決定候補領域に含まれるBACクローンを2つ同定し、合計218 kbをシーケンスし、新規Y染色体座乗遺伝子を3つを同定した。解析の課程で、X染色体特異的遺伝子1つを同定した。現在、これらの遺伝子について無性花変異体での欠失および野生型雄個体での発現解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Y染色体欠失・性転換変異体ライブラリの拡充は予定の規模で行っており、順調に進んでいる。一方、SPF性決定遺伝子領域のBACコンティグはいまだ作製途上にある。ゲノム支援によるBACライブラリの構築が遅れており、ヒロハノマンテマ全ゲノムを網羅するBACライブラリが未だ完成していないため、BACクローンのスクリーニングが予定通りには進まなかった。そのため、本年度に予定していたSPF性決定領域のBACクローンのシーケンス費用を次年度に繰り越すことにした。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム支援によるBACライブラリの完成後、直ちにSPF性決定領域のBACスクリーニングを開始し、BACコンティグを完成させる。完成後はSPF性決定領域のBAC全てを454Titaniumシーケンサーを用いて高速シーケンスを行う。それぞれのコンティグをPCRとサンガー法のシーケンスでつなぎ合わせ、SPF性決定領域のシーケンスを完了する。 ゲノム支援によるBACライブラリの完成が間に合わない場合には、以下の方法でSPF性決定領域に存在する遺伝子を網羅的に抽出する。エコタイプが異なる雄雌のヒロハノマンテマを交配し、F1世代を得る。交配親オス、交配親メス、F1世代のオス複数個体、F1世代のメス複数個体のそれぞれの花のつぼみからRNAを抽出し高速シーケンサーを用いてRNAseqを行う。得られた配列情報から各遺伝子のSNPsを検出しその遺伝様式を調べる。XY型性染色体の遺伝様式に合致する遺伝子群を抽出することで、性染色体連鎖遺伝子を特定する。このうちY染色体連鎖遺伝子群の欠失を無性花突然変異体で調査し、SPF性決定領域に存在する遺伝子を絞り込む。SPF性決定領域に座乗する遺伝子群について顕微発現プロファイルを行いSPF性決定遺伝子の同定を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
SPF性決定遺伝子領域のBACコンティグが間に合わなかったため、BACクローンのシーケンス費用(1,759,794円)を次年度に繰り越した。この費用は、ゲノム支援によるBACライブラリの完成が間に合えば、次年度の研究費を計画どおりSPF性決定領域のBACのシーケンスに当てる。ゲノム支援によるBACライブラリの完成が間に合わない場合は、繰り越し費用を上記性染色体連鎖遺伝子SNPsマッピングに当てる。 次年度の研究経費(1,300,000円)は、上記どちらかのシーケンス解析が終了後、顕微発現プロファイリングに用いる。SPF性決定領域に存在する遺伝子についてタイリングアレイをデザインし、野生型オスと無性花突然変異体のつぼみの発達ステージを追ってSPF性決定領域の全遺伝子のうち、雄蕊の発達時期に特異的に発現する遺伝子を絞り込む。
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