研究課題/領域番号 |
23770071
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岡本 直樹 独立行政法人理化学研究所, 成長シグナル研究チーム, 基礎科学特別研究員 (10577969)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | インスリン様ペプチド / 比較内分泌学 / ショウジョウバエ / 生理・内分泌学 / 昆虫 / インスリン |
研究概要 |
生物の体及び組織の成長は摂食に伴う栄養状態の変化に応じて厳密に制御されている。この成長制御因子として最も良く知られているのが、インスリン様ペプチド(insulin-like peptides; ILPs)である。本研究では、インスリン産生細胞(insulin-produing cells; IPCs)におけるILPs の発現・分泌制御機構の解明を目的とし、キイロショウジョウバエをモデル生物として研究を進める。本年度は、IPCs 内においてILPs の発現を制御する因子の同定と機能を解明するため以下の解析を行い、IPCsにおけるILPs発現制御分子機構の一端を明らかした。1.ショウジョウバエILPs(DILPs)の発現を制御しうる様々な転写因子についてIPCs特異的in vivo RNAiスクリーニングを行い、転写因子Dachshund (Dac)及びEyeless(Ey)が、特定のDILP(DILP5)の発現を制御していることを明らかにした。2.DacとEyがIPCs内において、協調的にDILP5の発現を制御していることを明らかにした。3.DacとEyがDILP5 promoter上で複合体を形成していることを明らかにした。4.ラット膵ランゲルハンス島β細胞由来の培養細胞株を用い、Dach1/2とPax6(DacとEyの哺乳類ホモログ)がショウジョウバエと同じ機構でインスリンの発現を制御していることを明らかにした。以上の研究により、DacとEyによるインスリンの発現制御機構が明らかになり、同様の機構が哺乳類でも保存されていることが示された。本研究は、昆虫インスリン発現制御機構を明らかにしただけでなく、哺乳類における未解決問題の解明にも踏み込んだ点で重要な意義を持つ。本研究成果は、科学誌Proc. Natl. Acad. Sci. USA誌に掲載された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究により、IPCs内におけるILPs発現制御分子機構の一端を明らかにすることができた。当初の計画では、来年度に行う予定であった哺乳類培養細胞株を用いた機能的保存性の解析まで踏み込み結果を示すことができたことから、当初の計画以上に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、IPCs内におけるDacとEyによるILPs発現制御分子機構を明らかにすることができた。しかしながら、ショウジョウバエにおいてILPs発現が栄養状態とどのようにリンクし制御されているのかは不明である。そこで、今後は栄養依存的にILPsの発現が制御される分子機構を解明する。細胞外からのシグナル、その受容機構、細胞内における分子制御機構全てに焦点を当てた解析を行うことにより、全体像を明らかにする。また、哺乳類との相関を解析するため、膵ランゲルハンス島β細胞由来細胞株を用いた解析も行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
薬品,試薬等(400千円)、ショウジョウバエ飼育用消耗品・飼料作製費(200千円)、抗体作製費(200千円)、国際会議・国内学会旅費(300千円)
|