研究課題
ペプチドニューロンが多様な環境変化に応じて柔軟に個体活動を調節するアルゴリズムの全貌を解明する一環として、単一ペプチドニューロンの入出力関係(どのような電気活動に応じてペプチドを放出することができるのか)を明らかにすることを最終目標として、申請者が確立した魚類終神経GnRHペプチドニューロン培養系と同ニューロンへの単一細胞electroporationによる各種蛍光遺伝子・蛍光分子導入法を活用し、単一ペプチドニューロンとそのニューロン集団が示すペプチド分泌の動態を解析している。 本年度は、分泌小胞の細胞体から軸索・樹状突起への移動の様子についてタイムラプスイメージングを行い、継続的に分泌小胞移動をイメージング可能な取得条件を検討し、一部解析可能なデータを得た。また実際に終神経GnRHペプチドニューロンが示す発火パターンによって膜電位を厳密にコントロール可能なaction potential clamp法の適応を試み、同方法によって終神経GnRHニューロンにおいて開口放出を誘起するのに必要な細胞内Ca2+濃度上昇を誘起しやすい発火活動パターンを明らかにした。 さらに個々の同定したペプチドニューロンに異なる種類の荷電分子を迅速に導入可能な単一細胞electroporation法の特徴を活かして、終神経GnRHペプチドニューロンが形成する細胞塊内での個々のニューロン間連絡を、隣接するニューロンへの異なる蛍光色素導入と共焦点顕微鏡像の三次元立体解析によって調べ、ペプチドニューロンにおける同期したペプチド放出に寄与する傍分泌調節の元となると考えられる形態構造を明らかにした。
3: やや遅れている
単一細胞electroporationによる蛍光遺伝子導入の成功率がある時期を境に落ち込み10%程度となっており、その原因究明に時間がかかっていることと、研究者の研究機関異動に伴い実験システム自体の再構築を行わなくてはならなくなったため、進捗に遅れが生じている。
本年度後半に研究代表者が所属機関を異動することが決定し、次年度は新たに独立して研究グループを運営することになったため、ペプチドニューロンの培養、電気活動記録、イメージング実験セット全てを新たに最初から構築する必要がある。 そのため実験セットが再構築され次第、前年度action potential clamp法によって検討した発火パターンで終神経GnRHニューロン細胞体に膜電位変化を誘起し、それに伴う分泌小胞移動、開口放出変化をイメージングにより解析する予定である。そのため実験装置再構築に伴う遅れの分、解析内容を厳選して実施する。
推進方策で述べたように、研究代表者が所属機関を異動し、新たに独立して研究グループを運営することになったため、ペプチドニューロンの培養・電気活動記録・イメージング実験に必要な実験セットを新たに最初から構築する必要がある。 研究者がこれまで受けてきた研究助成と赴任先既存の設備により、細胞培養、電気生理、および最小限レベルのイメージングに必要な装置は使用することが出来るが、蛍光イメージングのための励起光源などが不足しており、本年度はそれらの不足する設備の購入に研究費を充てる予定である。
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