ヒトを含む脊椎動物に広く見いだされる光受容タンパク質であるOpn5は、哺乳類は1種類(Opn5m)しか遺伝子を持たないが、哺乳類以外の脊椎動物はそれ以外に2種類(Opn5L1、Opn5L2)の遺伝子を持つことがわかっている。研究代表者は本研究課題の前および昨年度の成果において、ニワトリOpn5mとOpn5L2がともに紫外光を受容しGタンパク質を活性化する紫外光感受性オプシンであることを見いだした。また、これらの発現部位を調べたところ、網膜の視細胞以外の神経細胞、松果体、視床下部に存在することがわかった。また、ヒト、マウス、カエル、ゼブラフィッシュのOpn5mはすべてニワトリOpn5mと同様に紫外光感受性であることを見いだした。以上の研究背景を元に本年度は以下の成果を得た。 1.脊椎動物Opn5mの分子特性をさらに解析したところ、非哺乳類Opn5mは11シス型レチナールを結合し紫外光受容で活性化する以外に、全トランス型レチナールを直接結合し光とは関係なく活性化する一方、哺乳類Opn5mはその能力を失っていた。さらにこの全トランス型レチナールの直接結合能の喪失は、1アミノ酸の変化によりなされていることがわかった。つまり、哺乳類Opn5mは1アミノ酸変異により光受容体に特化していると言える。 2.ニワトリOpn5L1の分子特性の解析を行った。結合するレチナール異性体を調べたところ、多くのオプシン類が結合する11シス型を結合せず全トランス型のみを結合した。さらに、この全トランス型レチナールの結合により光とは関係なくGタンパク質を活性化し、光受容によりその活性が減少することがわかった。つまり、Opn5L1は光によって活性化されずレチナール結合という化学受容によってのみ活性化される特異なオプシンである。
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