研究課題/領域番号 |
23770083
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大園 享司 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (90335307)
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キーワード | 菌類 / 多様性 / 熱帯林 / メタゲノミクス / 次世代シーケンサー / 林冠生物学 / エンドファイト |
研究概要 |
菌類は地球上に150万種と見積もられる生物群だが、微小で形態的な特徴に乏しいため、多様性研究が立ち遅れている。ところが近年の分子生物学的手法の発展により、菌類多様性研究の方法論的な問題点が克服されつつある。本研究では、超多様性が示唆されるにもかかわらず実証研究がほとんどない熱帯樹木の葉エンドファイトとよばれる菌類群について、次世代シーケンサーを用いたメタゲノミクスにより多様性を網羅的に解析することを目的とした。課題の2年目にあたる平成24年度には、オーストラリア・クイーンズランド州の低地熱帯林で採取した生葉試料を解析した。優占2樹種を対象に、林冠クレーンを用いて高さ35メートルの林冠部にアクセスし、見かけ上健全な生葉を採取した。実験室にて直径5ミリの葉片を打ち抜き表面殺菌した後、エンドファイトの全ゲノムDNAを抽出・精製した後、アダプター・タグ配列付きのプライマーを用いてrDNAのITS1領域のPCRを行った。PCR産物は精製した後、454 Life Sciences社製ロッシュ454 GS-FLXシーケンサーにて菌類DNAの塩基配列を決定した。その結果得られた配列から、低クオリティの配列、配列長の短い配列、キメラ配列を除外したあとの20,298配列を解析に用いた。これらの配列は95%以上の相同性に基づいて、樹種ごとに104および131の操作的分類群(OTU)に区分された。配列数―OTU数曲線の解析から、この約2万配列の解析ではOTU数は飽和しなかった。単一の配列からなるOTU(シングルトン)数は、29、35(全OTUの約3割)にのぼった。子嚢菌類に属するOTU数が多い一方、担子菌類の割合は少なく、分類群を特定できなかったOTUも数多く見られた。来年度は、これまでに解析したマレーシアとオーストラリアのデータの比較を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は課題の2年目にあたり、オーストラリア・クイーンズランド州の低地熱帯林で採取した生葉試料の解析を目的としていたが、当初の予定どおり分子生物学的な実験とバイオインフォマティクスの手法を用いた解析を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
課題の3年目にあたる平成25年度には、追加の分子実験を行いながら、平成23年度に解析したマレーシアのデータと、平成24年度に解析したオーストラリアのデータを比較して取りまとめ、学会および論文として発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
DNA実験試薬、ピペットチップ、サンプルチューブといった消耗品が必要である。菌類DNAの系統解析に関する研究打ち合わせ、学会にて研究成果公表するための国内旅費が必要である。特に、データ整理・解析に莫大な労力を要するため、それを遂行するための研究補助者謝金が必要である。
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