動物の体表に見られる多彩な模様パターンは、生物の多様性を鮮やかに示す実例であるばかりでなく、まさにその多様性を生み出す要因ともなり得る。本研究課題では「種間交雑による模様パターンの混合」という現象に着目した。模様パターンの混合が交雑による種分化をもたらし得る、という仮説を検証し、模様パターンの多様性を生み出すメカニズムの一端を明らかにするため、「模様パターンの混合」が種分化を引き起こす条件の数理的検討、トラフグ属魚種を対象とした「模様パターンの混合」の実例の探索と検証、「模様パターンの混合」をもたらす因子の同定とメカニズムの解明、の各項目について研究を行った。研究の最終年度である本年度は、前年度に引き続き稀少種ムシフグを含むトラフグ属魚種の収集と解析を進めた。ムシフグについては、新潟大学臨海実験所のご協力のもと、産卵期に多数の個体が集まる地点を見出し、これまでに収集したサンプルを大幅に上回る数の生体サンプルを確保することができた。最近縁種であり異なる模様パターンをもつコモンフグを対象とする比較ゲノム解析を現在鋭意進めており、模様パターンの多様性を生み出すメカニズムについて知見が得られることが期待される。
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