研究課題/領域番号 |
23770089
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
坪田 博美 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10332800)
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キーワード | コケ植物 / シダ植物 / 緑藻類 / DNAバーコーディング / 地理的変異 / 葉緑体ゲノム / 散布 |
研究概要 |
平成25年度度は,前年度に引きつづき,大気中からの散布体の回収とDNAバーコーディングによる同定および地上に生育する集団の地理的変異を明らかにするためのシークエンスを行った.大気中からの散布体の回収では,回収効率の改善のため,回収方法の検討も行った.また,前年度に引きつづきコケ植物ではヒョウタンゴケやゼニゴケが多く確認された.さらに,回収地点周辺で記録の無い種の確認ができ,コケ植物の長距離散布について直接的な証拠を得ることができた.コケ植物以外のサンプルについてもDNAバーコーディングを行い,シダ植物数種と緑藻類の存在も確認できた.緑藻類の一種スミレモ類も確認でき,地衣類の共生藻の起源についても新たな知見が得られる可能性があるので,その実態について研究を進める予定である.また,地理的変異を明らかにするため関東以西の日本国内の各所でサンプルを採集することができ,葉緑体rbcLとrps4遺伝子の塩基配列の決定を進めた.一部のサンプルについては,核ITS領域についても塩基配列を決定し,変異の存在を確認した.次世代シークエンサを用いた葉緑体ゲノムの塩基配列決定については,DNA抽出を行い,現在実験を進めている.Long PCRにより増幅が確認された領域については,プライマーウォーキング法によっても配列決定を行っている.これらの研究成果の一部は,専門学会で発表を行った.また,大気中からの散布体の回収に関する内容については,現在論文を執筆中である.野外調査の際に,いくつかの種について新たな知見が得られたので,論文の形で発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
大気中からの散布体の回収およびDNAバーコーディングによる同定については,当初計画よりも順調に進展している.地理的変異についてはほぼ計画通りの進展状況である.一方,葉緑体ゲノムについては初年度の震災に伴う予算の遅れの影響と,スギゴケやミズゴケなど他の蘚類で増幅が確認されたプライマーを用いてもLong PCRによる増幅が確認できなかったことから当初計画よりも遅れている.一部計画よりも進展があるが,葉緑体ゲノムの解析について遅れがあることから,研究全体としてはやや遅れているとした.
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今後の研究の推進方策 |
葉緑体ゲノムの解析について,既存のプライマーを用いたLong PCRによる増幅が期待通りではなかったことから,超遠心法やパルスフィールド電気泳動法などによる葉緑体ゲノムの精製と,それをテンプレートにした次世代シークエンスを行うことで,現在の状況を打開したい.また,前年度に続いて散布体の回収物のDNAバーコーディングによる解析を進めるとともに,地理的変異についてもデータを蓄積する.最終年度であるため,全体のまとめも行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していたよりも安い価格で消耗品が購入できたことや,支出を可能な限り節約した結果,次年度使用額が生じた. 消耗品としての使用を予定している.また,全体の価格上昇がみられるため,それに対応するためにも使用することを予定している.
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