本年度は特に、国内の主要なカブトガニ生息地の中で、唯一調査が不足していた長崎県壱岐島において、本種集団の調査および得られた試料の集団遺伝学的解析をおこなった。これまでの本プロジェクトによる解析により、日本のカブトガニ集団は大きく2つの遺伝的グループ:西側グループと東側グループに分かれることが示されている。壱岐島はこの2つの遺伝的グループの境界に位置し、かつ九州本島沿岸から20km沖合に位置しており、隔離された集団といえる。9月に実施した現地調査において、幼生の生息地が特定され、混獲された亜成体6個体と合わせて、計13個体の試料を得た。また亜成体においてはカブトガニウズムシの寄生も確認された。ミトコンドリアDNA・AT-rich領域の解析では、全ての個体が同一のハプロタイプを示し、東側グループへの帰属を示した一方で、マイクロサテライト8座位の解析では、その値は小さいものの他の全ての集団と有意に異なる遺伝的分化が検出された。本集団の遺伝的多様性は低く、創始者効果/ボトルネック効果の影響が疑われた。結果として、この隔離された壱岐カブトガニ集団は、特有の遺伝的特徴を備えており、その保全において一つの独立した保全ユニットとするべきであることが示唆された。 また本年度の実績として、IUCN国際カブトガニワーキンググループが中心となり、カブトガニ類の生物学、保全や関連する社会教育についてまとめた本の出版準備(2015年8月に出版)が進められ、本申請者も、ワーキンググループの一員として、これまでの一連の本研究プロジェクトの結果に基づき、日本のカブトガニ集団の遺伝的特徴と国外集団との比較、国内における保全ユニットの提案、さらに伊勢-三河湾にて報告された外来カブトガニ集団の遺伝的解析についてまとめた。
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