研究課題
接合藻ヒメミカヅキモには、Plus型、Minus型と呼ばれる異性細胞間で有性生殖を行うヘテロタリック株が存在している。本種には、互いに生殖隔離した集団である交配群(生物学的種)が存在する。これらの生殖隔離機構を解析することで、種分化機構の解明が期待されるが、有性生殖の誘起が可能な交配群はIIA、IIB、IEの3群のみで少ない。これまでに、静岡県の麻機遊水地から新規交配群Gの発見に成功した。系統解析の結果、本研究課題でRNAseq解析を行った交配群IEに近縁であった。隔離の状況を明らかにしたところ、両交配群は接合子は形成せず、生殖隔離しているものの、部分的な生殖反応をおこすため、性フェロモンが作用し合っていることが示唆された。交雑実験の結果、交配群Gのplus型細胞から放出されるPR-IPは交配群IEのminus型細胞に作用しないが、交配群IEのPR-IPは交配群Gに作用することが明らかとなった。性フェロモンの配列を確認するため、栄養増殖期、有性生殖期、接合子発芽期の細胞をそれぞれ回収し、Total RNAの抽出を行った。次に、得られたTotal RNA を用いてHiseq 2500によるRNA-seq配列決定(ペア-ドエンド、101-bp)を行った。得られたリードを元に、PR-IP Inducer遺伝子(CpPI), PR-IP 19 kDaサブユニット(Cp19ksu)、PR-IP 42 kDaサブユニット(Cp42ksu)の仮想オルソログ配列を得た。PR-IPの19 kDaと42 kDaにおいては、交配群IEのものに対してアミノ酸レベルで90%近い相同性を得た。また、19 kDaを運ぶキャリアタンパク質である42 kDaに比べ、実際に細胞に作用する19 kDaの方が相同性が低いことも示された。また、19 kDaのアミノ酸の違いにより、交配群GのPR-IPが交配群IEに作用しないことが示唆された。
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Plant and Cell Physiology
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Phycologia.
巻: 53 ページ: 571-578
http://dx.doi.org/10.2216/14-35R1.1
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