本研究は、リモートセンシングの技術を用いて撮影した鳥類のマルチスペクトル画像(デジタル画像の各ピクセルに通常のRGB値ではなく、分光スペクトル情報を割り当てたもの)に対し、パターン認識工学の手法を適用することで各種画像特性値を求め、それらの数値の種間比較を行うことによって鳥類の色彩進化の謎を解くこと目指している。平成24年度は、(1)「派手な鳥」と「地味な鳥」の出現率が地理的にどのように変化しているか、そのグローバルな地理的変異のパターンを解明すること、(2)発見されたパターンの解釈を試みることの2点を目標に研究を進めた。 対象としたのは汎世界的に分布するスズメ目鳥類である。このグループついてマルチスペクトル画像の集積を進めるとともに、鳥の「派手さ」、「地味さ」を表す数値の導出を試みた。現在使用しているマルチスペクトル画像は紫外光・可視光の領域を21の区間に区切ってデータ化しているのだが、もしある一つの標本が合計n個のピクセルで表されるとするなら、その標本の色彩の多様性は21次元空間中のn個の点の空間的広がりによって表されると考えられる。そこでこれらの点についてその重心からのずれの総和を基本に「派手さ」指標の作成を進めた。なお、その際、鳥類の視細胞の特性にも注意を払った。また、解析から系統関係のノイズを取り除くために必要となる統計手法についても検討を進め、解析に必要とされるスズメ目鳥類の系統・生態・分布に関する情報についても整備を行った。
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