昨年度までの解析により、新種であることが明らかとなったMIC1-1株に対し、Prolixibacter denitrificansを提唱し、誌上報告した。MIC1-1株と系統的に近縁であったMIC1-4株のDNA-DNA相同性試験を行った結果、両者のDNA-DNA相同性は70-84 %であり、両者は同種の細菌であることが明らかとなった。P. denitrificans MIC1-4株の鉄腐食能を解析した結果、MIC1-4株は、硝酸塩 (電子受容体) と酵母エキス (炭素源) 存在下で、無菌区の約3倍の鉄イオンを溶出し、鉄腐食を引き起こすことが明らかとなった。MIC1-4株による鉄腐食時の鉄イオンの割合は、Fe2+:Fe3+ = 7:3であった。硝酸塩非存在下では鉄イオンの溶出が生じなかったことから、MIC1-4株は、MIC1-1株と同様に硝酸還元を介して、鉄腐食を引き起こすと考えられる。以上の結果から、MIC1-4株は鉄腐食性P. denitrificansの2例目の培養株となることが明らかとなった 一方、昨年度までに構築した既知微生物種のデータセットに1099株の既知微生物のデータを追加し、13520株のデータセットとした。本データセットに、本研究で発見したP. denitrificans MIC1-1株とMIC1-4株、Draconibacterium sp. MIC3-8株の16S rRNA遺伝子塩基配列を組み込んだ。金属腐食微生物は系統的に多系統にまたがるため、実環境で金属腐食微生物を発見しても、迅速に同定することは困難である。今後、新たに発見する金属腐食微生物の16S rRNA遺伝子塩基配列データを本ライブラリーに更新することで、金属腐食微生物の同定や既知金属腐食微生物との系統的関連性の解析を加速化できるものと考えている。
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