研究課題/領域番号 |
23770096
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
堤 千絵 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究員 (30455422)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 着生 / 寄生 / シダ植物 |
研究概要 |
着生シダ植物ヒトツバ属(Pyrrosia)には,樹幹着生種(ヒトツバなど),枝先着生種(P. lanceolataなど),宿主を枯死させる推定略奪寄生種(P. piloselloides)が知られる。宿主枝の枯死は推定略奪寄生種の宿主への寄生化が原因の可能性がある。そのためヒトツバ属において、樹幹から枝先への着生化、および、着生から寄生化、という2つの進化がおこったという仮説をたてて、それらを検証することを目的に研究を行っている。 本年度は、推定略奪寄生種P. piloselloidesが多く生育するインドネシアボゴール植物園において調査したところ、さまざまな樹種に着生する様子が観察され、着生している宿主の細い枝ほど枯れている傾向が観察された。宿主と推定略奪寄生種の成長を記録するために、推定略奪寄生種を60個体をマーキングし、それぞれの枝長や葉の枚数などを測定し、成長記録観察を開始した。 さらにヒトツバ属の複数種について、日本およびインドネシアにて、系統解析用および形態解析用のサンプリングを実施した。これらの材料をもちいて、宿主およびヒトツバ属の準超薄切片を作成し形態観察を行った結果、P. pilloselloidesの根毛が宿主枝の組織内に食い込む様子が観察された。このことは、P. pilloselloidesが単なる着生種ではなく、宿主にダメージを与える等の影響を及ぼしている可能性を示唆している。 今後もより詳細な形態解析を実施するとともに、推定略奪寄生種P. piloselloidesおよび宿主の生長を観察し、P. piloselloidesの着生(あるいは寄生)による宿主の生長量変化を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であった系統解析はやや遅れているものの、P. piloselloidesの根および宿主枝組織の形態観察、および、両者の生長量の観察については実施するできた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、ヒトツバ属の複数種について、分子系統解析、形態観察、P. piloselloidesとその宿主の生長量測定を行う。ヒトツバ属のサンプリングは今後も増やし、複数種について、詳細な形態観察を行うとともに、成長過程とそれに伴う宿主への着生法について重点的に調査観察を実施する。さらに、宿主枝の生存の程度やP. piloselloidesの生長量調査を実施するために、継続してインドネシアのボゴール植物園にて観察と計測を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
インドネシアでの生長量調査を実施するための旅費、形態観察や系統解析の補助者雇用のための謝金、分子系統解析や形態観察用の試薬類などの消耗品として使用予定である。
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