着生シダ植物ヒトツバ属(Pyrrosia)には,樹幹着生種(ヒトツバなど),枝先着生種(P. lanceolataなど),宿主を枯死させる推定略奪寄生種(P. piloselloides)が知られる。宿主枝の枯死は推定略奪寄生種の宿主への寄生化が原因の可能性がある。そのためヒトツバ属において、樹幹から枝先への着生化、および、着生から寄生化、という2つの進化がおこったという仮説検証を目的に研究を行っている。 これまで行ったP. piloselloidesと宿主の生育状況調査をまとめたところ、P. piloselloidesが着生したままの宿主は、成長するケースも、衰退するケースも観察された。P. piloselloidesを除去すると、ほとんどの宿主が成長した。P. piloselloidesはP. piloselloidesの葉を除去したとても成長せず、むしろ衰退するケースがみられた。これらの結果からP. Piloselloidesはホストに悪影響を及ぼすことが推定された。 宿主の弱体化の原因は、P. piloselloidesの寄生化が原因ではなく、P. piloselloidesの菌根菌による病害が原因である可能性が指摘されている。菌根菌に特異的なプライマーによって菌の検出を試みたが今回は検出できなかった。 P. piloselloides以外でも、野外調査から推定略奪寄生種の可能性があると考えられた他の着生植物(サトイモ科フィロデンドロンなど)についても、根や根毛の食い込みの解剖学的な観察を行った。
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