研究課題
24年度は前年度に引き続き小笠原海溝域、鹿児島野間岬鯨骨化学合成生態系における真菌多様性調査を主に行った。小笠原海溝域の調査では、これまでに環境PCR法のみで検出されている未知真菌群のゲノム情報を得る事を目的として、Single cell genomicsを行った。Single cell genomicsの真核単細胞生物への応用にはまだ問題点が残るが、数は少ないながらも非常に新規性の高い真核微生物配列を得る事に成功した。また、小笠原海溝で採取した水からは菌糸内に寄生菌様のものが観察される菌が分離された。これらは、環境PCR法で検出されている原始的な未知真菌群である可能性もあり、現在電子顕微鏡によって寄生菌様の実態・形態解析を進めている。また、この寄生菌様のものは鯨骨から分離された菌からも発見されており、深海に生息する菌類に共通する現象の可能性もあり、解明を急いでいる。野間岬鯨骨化学合成生態域より分離された真菌群は他環境に比べ、糸状菌よりも酵母の数が多かった。また、分離された糸状菌はこれまでに他の深海底泥サンプルからは分離されていない種が多く、鯨骨に特有の真菌相が存在することがわかった。人為的に沈めた木片から分離された「深海性真菌」である可能性の高い菌(世界で2例め)に関しては予定通りにEST解析が終了し、55,471個の遺伝子配列の取得に成功した。内55,471は完全長が読めており、これら遺伝子群の詳細なデータ解析を行う事によって、深海に生息する真菌の生態の解明へと繋げる事ができる。
2: おおむね順調に進展している
予定していたサンプリングが順調に進み、培養や環境PCR法による深海における真菌多様性が海溝や鯨骨化学合成環境などで進んでいる。研究目的である“これまでに報告されていない新奇真菌類の発見”を順調に達成できていると考える。これまで深海環境からのみ分離されている「深海性真菌」である可能性の高い菌のEST解析にも成功し、順調に深海真菌の生態についての解明が進みつつある。
来年度はEST解析により得られた遺伝子配列情報の詳細解析を行い、深海における真菌類の代謝系の解明等を行う。また、来年度初めには相模湾初島沖航海が予定されており、FISH用のサンプリングを行う予定である。
該当なし
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