研究概要 |
平成25年度は予定されていた相模湾メタン冷湧水域のサンプリングが順調に進み、新たに数種の新種を含む132株の真菌の培養分離に成功した。また、次世代シーケンサーを用いて網羅的な真菌多様性解析を行い、これまでに注目していた深海環境から高頻度出現している真菌グループDSF1等とはまた違う、原始的な新規真菌グループが数多く深海環境に存在している事を明らかにした。これら未知真菌グループの実態解明のため、FISH用のサンプリング、プローブ作成も行った。また今年度は前年度から着手していた、人為的に沈めた木片から分離された「深海性真菌」である可能性の高い菌(世界で2例目)のEST解析によって得られた遺伝子群の詳細な解析を行い、その代謝経路や木材分解関連酵素などの存在を明らかにした。 本研究全体では、メタン冷湧水域、深度1万メートルの海溝域、鯨骨域の堆積物や海水、生物試料のサンプリングを行い、固体/液体培養、好気/嫌気培養、高圧培養等様々な方法を用いて300株以上に及ぶ真菌分離株の取得に成功した。また、single cell genomicsや次世代シーケンサー等による網羅的な真菌多様性解析により、本研究で特に注目していた未培養真菌グループDSF1以外にも、数多くの新規真菌グループが深海環境中に存在する事を明らかにした。中でもメタン冷湧水域の堆積物中からDNA, RNAレベルの両方で高頻度に検出された原始的な新規真菌グループは、近年、従来の菌類の概念から外れる新門として提唱されたCryptomycotaに近縁な事が示唆された。本研究を通して多くの新規真菌の分離、新規未知真菌グループの検出、深海からのみ分離が報告されている深海真菌のEST解析に成功し、これまで研究の進んでいなかった深海環境中の真菌の多様性やその生態について解明が進んだ。
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