研究課題/領域番号 |
23770099
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研究機関 | 大阪市立自然史博物館 |
研究代表者 |
松本 吏樹郎 大阪市立自然史博物館, その他部局等, その他 (90321918)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 系統学 / 生物間相互作用 / 多様性 |
研究概要 |
三重県と熊本県でサンプリングを行った.購入したマレーゼトラップや灯火採集用具を用いた.解析上重要でありながら手持ちのサンプルでは塩基配列の読み取りが不可能であった種の一部に関して,追加サンプルを入手することができた.またこれまで未知であった分類群が2種得られたが,1種は寄主クモに付着した幼虫であったため,同時に寄主情報も得られ,クモの利用法の進化経路の解明を目的とする本研究において非常に重要なサンプルを得たことになる.実験は5つの領域における塩基配列データを対照群の大部分の種で読み取ることができた.バーコード領域であるmitochondria COI領域は,クモヒメバチ群においても,種の同定に利用可能であることが明らかとなった.寄主クモに付着した幼虫のみしかサンプルがないものに関しても,どの種のクモヒメバチか推定でき,寄主が未知あるいは不確実な寄主記録しかなかった5種について,寄主ー寄生者の対応付けをすることができた.予備解析では,塩基配列を読み取った5領域のうち,mitochondria COI領域,核28S,18S領域が系統情報を有していると考えられた.解析結果は概ね形態情報から描かれた系統像と一致していたが,一部齟齬が見られた.この点に関しては次年度で詳しく解析する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対照群に関して5つの領域における塩基配列データを大部分の種で読み取ることができた.予備解析を行い,系統推定に有効な領域の見当をつけるという23年度の計画は達成されている.一方でサンプルの状態により実験が失敗に終わったものもあり,これらについては本年度に追加サンプルを得る必要があるが,これは計画当初より予定していた事柄であり大きな遅れとはならない.
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今後の研究の推進方策 |
属間の系統関係の解像度を上げるため異なる領域での解析を行う.標本の劣化によると考えられる配列の決定が不可能であった2種と,新たに見出された未記載種については解析に使えるサンプルが無いか,少ないため,過去に標本の得られた地域でサンプリングを行う.得られた配列により,本解析を行い,対象群内の系統関係を明らかにし,寄生習性,寄主利用,形態の進化(多様化)についての考察を行う.23年度は既存のサンプルの解析を主に行ったため,まだ十分に実施できていない新たに得られたサンプルの処理を,24年度に繰り越して行う.前年度の解析で得られた分子系統樹には形態による系統仮説との齟齬が見られるため,形態情報の再確認を行い,また新たに得られた分類群に関しては既知種と比較し分類学的処理を行う(アメリカ合衆国のAmerican Entomologicak Instituteに5日間滞在).研究材料として分類上の地位を確定するのは本研究の遂行上の必要事項である.
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き解析を行うため,試薬類や消耗品費を使用する.得られたデータの解析のためパソコンを購入する.サンプルの状態が悪く十分に塩基配列を読み取れなかったサンプルに関して追加を得るため,また解析の信頼性を向上させる目的で地理的に離れた生息地のサンプルを解析に加えるため,サンプリング旅費とサンプル処理のための補助人件費を使用する.新たに見出された分類群に関して,分類学的地位を確定するために世界で最も対照群の資料の充実しているAmerican Entomologicak Instituteを訪問する必要があるが,このための旅費を使用する.
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