研究概要 |
新たに、EF1a部分配列を分子マーカーとして利用し、解析を行い、対象とするクモヒメバチ属群の属間、特に初期の分岐関係を明らかにすることができた。これまでに解析済みであったCOI, 28Sと組み合わせて系統解析を行ったところ、クモヒメバチの単系統性が認められ、内部に高い値で支持されるいくつかの単系統群が見出された。これは従来の形態データに基づいた系統関係とは異なるものであった。クモヒメバチ属群は大きく3つのクレードに分けられた。クレードIにはPiogaster, Schizopyga, Brachyzapusなど、産卵室や漏斗網をつくるクモの寄生者が含まれる。Piogasterは従来、それ以外のクモヒメバチ全ての姉妹群となると考えられていたが、このクレードIのなかに含まれた。Schizopygaは多系統であることが明らかとなり、本属のシノニムとされたDreisbachiaを復活させる必要があることが明らかとなった。クレードIIにはそれ以外の、空中に網を張るクモを利用するクモヒメバチが含まれ、さらにAcrodactyla、 Megaetaira等から成るクレードと、それ以外に分けられた。えられた系統樹上に、観察された寄主操作をマッピングしたところ、寄主操作はそれぞれのクレードで見られること、しかし各クレードでその様式は異なることから、寄主を操る能力そのものは同一の起源をもつかもしれないが、クレードごとに寄主に対応した寄主操作が進化したことが明らかとなった。
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