研究概要 |
モンスーン熱帯アジアにおいて、ショウガ科の文化の中心地の一つであると推定されるが、最も多様性の解析研究が立ち後れているミャンマーにおいて、ビクトリア山からZingiber, Cautleya, Boesenbergia, Roscoea, Rhynchanthus, Globba, Hedychium, Alpinia, Kaempferia, Amomum, Hemiorchisの11属26種のショウガ科植物を明らかにした。このうち、Zingiber属1種Zingiber longiligulatumは、中国雲南省から記載され、中国南西部固有とされていたものであるが、ビクトリア山から採集された標本およびサガイン管区など西北部から採集した標本もこの分類群に相当すると考えられるものが複数あることがわかり、分布はミャンマーが中心ではないかと推定された。今回のビクトリアの記録は分布の南限に当たる。さらに、Zingiber1種およびHedychium1種、Boesenbergia属1種については、既知種に今のところ当てはまるものがなく、未記載種の可能性が高く、今後、詳細な検討を行う。また、タイプ標本を含むインドシナのショウガ科標本を調査するため、タイ・バンコクの林業省標本館(BKF)、コルカタの標本館(CAL)に滞在し、1000点以上の標本調査研究を実施した。これらの成果は、途中経過として「ビクトリア山のショウガ科植物相」として日本植物分類学会第13回大会(千葉大学)にて発表した。昨年度に記載したミャンマー産ショウガ属の新種Zingiber popaenseを含む、ミャンマー産のショウガ植物について、葉緑体DNAのrbcLおよび trnL-F領域のシークエンスを行い塩基配列を決定した。今後、核DNAのITS領域の塩基配列を決定し、隣国のタイに産する種との系統関係を明らかにする。
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