研究概要 |
本研究は、アブシシン酸(ABA)の細胞間輸送の鍵となる2種類のABAトランスポーターAtABCG25及びAtABCG40を対象としてX線結晶構造解析を行い、構造生物学的な観点からABA輸送の分子機構の解明を目指すものである。この目的のために、研究期間全体を通してAtABCG25及びAtABCG40の大量調製系の確立を進めた。前年度(初年度)に改変pBADベクター及びC41(DE3), C43(DE3)を含む種々の大腸菌株での発現検討の結果、大腸菌を用いた発現ではAtABCG25及びAtABCG40が分解を受けることが示唆された。そこで本年度(最終年度)は酵母Pichia pastorisを用いた発現系の構築を進めた。N末端αファクターシグナル配列及びC末端TEV認識サイト-GFP-Hisタグ配列を付加したコンストラクト1とN末端GFP-Hisタグ-TEV認識サイト配列を付加したコンストラクト2を組み込んだ酵母形質転換ベクターを構築した。このベクターを用いてGS115株を形質転換し、選別した高コピー形質転換体での発現確認をおこなった。SDS-PAGE及びGFPの蛍光検出により、コンストラクト1が効率的に膜画分へ発現することが示された。部分的な分解が確認されたものの全長配列のタンパク質を取得できていることが示唆された。また、種々の界面活性剤による可溶化を検討し、LDAOまたはFos-choline 12でより効果的に膜画分からの目的タンパク質を可溶化できることが示された。本研究では、最終目標である構造解析には至らなかったが、そのための基盤となる酵母を用いた目的タンパク質の発現系を構築した。
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