研究課題
1、Sfr1N末端側領域の構造解析Sfr1N末端側領域(1-179)の構造解析のため、この領域のX線小角散乱解析をおこなった。その結果、この領域は大部分が天然変性領域であることを明らかにした。また、機能解析もすすめ、DNA結合領域とRad51結合領域の決定を行なった。その結果、それぞれ結合領域はとても小さく10-20残基程度であることを明らかにした。2. Rad51の結晶構造解析及びRad51-Swi5-Sfr1複合体の溶液構造解析Rad51単体の結晶構造解析を行うため、発現領域の検討と結晶化を行なった。当初はRad51全長で精製及び結晶化スクリーニングを行っていたが、精製過程で分解を受けてしまうことや結晶が析出しないなどの問題点があった。そこで発現領域を検討し、N末端側44残基を削り、分解の問題は克服した。その変異体で結晶化スクリーニングを行い、複数の条件で結晶が析出した。しかし結晶の質に問題がり、最大分解能10Å程度であった。Linear Dichroism測定により、Rad51とSwi5-Sfr1の化学量論比が15:1程度であることを明らかにした。またX線小角散乱解析においても同様の結果が得られた。これらの結果からRad51フィラメントに沿う形でSwi5-Sfr1が結合していることが示唆され、これまで報告されている生化学的データにおよそ一致していた。さらにLinear Dichroism測定により、Swi5-Sfr1がRad51フィラメントを硬くすることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
Sfr1N末端側領域の構造解析では結晶構造解析を行っていないが、X線小角散乱による低分解能溶液構造解析や生化学的解析を進めており、N末端側領域の構造機能相関を明らかにしている。Rad51では発現領域の検討を行い、結晶化に成功しているため当初の計画通りに進んでいる。Rad51-Swi5-Sfr1複合体調製では、Lineer Dichroism、X線小角散乱解析などをすすめ、溶液構造解析を行った。その結果Swi5-Sfr1とRad51の化学量論比の決定やSwi5-Sfr1結合によるRad51の構造変化を明らかにした。そのため研究目的に記載したRad51やSwi5-Sfr1の動的な構造を明らかにできており、順調に研究が進んでいる。
Sfr1N末端側領域は天然変性領域であることが明らかになったため、溶液構造解析を進めることで、Sfr1の構造機能相関を明らかにする。溶液構造解析ではCD、NMR、X線小角散乱を用いる。これにより、天然変性領域の構造と基質が結合した際の構造変化を明らかにする。Rad51単体では結晶化条件の最適化を行い、結晶構造解析を行う。結晶化条件の最適化では一本鎖DNAを加えるなどより幅広い条件で検討し、より質のよい結晶を得る。複合体調製及び構造解析のため、電子顕微鏡解析を行う。これまでもRad51-Swi5-Sfr1複合体の電子顕微鏡観察をおこなってきているため、溶液条件検討はおおよそすんでいる。またLinear Dichroism測定などの結果から、複合体の化学量論比を見積もることができたため、より正確度の高い解析を行うことができる。
本研究課題は、基本的には現有の実験施設、機器で遂行可能である。そのため、研究費の多くはタンパク質精製・結晶化に使用する試薬と消耗品や、結晶構造解析や研究打ち合わせのために出張費で使用する。しかし、結晶化条件の詳細な検討が必要であるため、結晶化用恒温器の購入を計画している。
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