研究課題
蛋白質の分子内に存在するフェニルアラニン、チロシン残基芳香環の回転運動は蛋白質の比較的遅い構造揺らぎ(large amplitude breathing motion)と相関し、同揺らぎの研究において唯一の情報源である。本課題では、SAIL-NMR法とCPMG緩和分散法を組み合わせた芳香環回転速度の解析法の開発研究を実施した。本課題ではBPTI(分子量6.5 kDa)に含まれる芳香環回転速度が既知の残基、Tyr-23 に対してCPMG法の適用し、新手法の検証実験を実施した。本解析においては、芳香環の回転軸に関して対照な位置にあり、環反転により交換するデルタ1とデルタ2、あるいはイプシロン1とイプシロン2炭素を対象とした。この場合、両炭素間に存在する2Jスピン結合の存在により、緩和分散がどのような影響を受けるかが問題となる。そこで、環の片側デルタ位のみを1H-13C位置選択的標識を施したチロシンをBPTIに取り込ませて、緩和分散解析を実施した。その結果、既報の線形解析より得られた値に近い反転速度を見積もれることが実証できた。同手法は従来のNMR線形解析法と比較して解析精度が向上し解析可能時間域もミリ秒からマイクロ秒近くまで拡張される。このことは、芳香環回転速度に基づいた構造揺らぎの情報を分子の広範な領域において得ることが実現し、揺らぎの大小と活性との比較等、同構造揺らぎと生物機能の関連を調べる研究の開拓につながることが期待される。
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