研究課題/領域番号 |
23770110
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松浦 能行 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10402413)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 核外輸送 / X線結晶解析 / 反応速度論 / 蛋白質相互作用 |
研究概要 |
真核細胞において、核-細胞質間の高分子能動輸送は、細胞核機能とその制御を支える重要なプロセスである。CRM1は最もmajorでgeneralな核外輸送受容体(exportin)であり、Leu-rich nuclear export signal (NES)をもつ輸送基質(cargo)を認識して核から細胞質に運び出す。CRM1による核外輸送では、まず核内でCRM1とNES-cargoとRanGTPが3者複合体(核外輸送複合体)を形成する(核内にはRanのGEFが局在するため核内ではRan GTPaseは主にRanGTPになっている)。この複合体はCRM1と核膜孔複合体構成蛋白質群(ヌクレオポリンと総称される)の相互作用によって核膜孔を通過する。最後に細胞質で、RanによるGTP加水分解を促進する蛋白質群(RanBP1とRanGAP)の作用によりCRM1核外輸送複合体は解体される。本研究では、CRM1単独の高分解能X線結晶解析を行い、RanGTP不在下では、CRM1内部の相互作用により、NES結合部位が閉じた構造に安定化されるという自己阻害機構を明らかにし、CRM1-RanGTP-NES複合体との構造比較から、RanGTPがCRM1の自己阻害を解除する仕組みを解き明かした。これにより、核外輸送の方向性制御機構の鍵を握る、「核内での核外輸送複合体形成がRanGTPに依存するメカニズム」を解明した。さらに、CRM1による核外輸送のcofactorとして機能する蛋白質Yrb2の機能発現メカニズムについて、速度論解析と、X線結晶解析による反応中間体の構造解析を行い、Yrb2が核内での核外輸送複合体形成反応を触媒的に促進する機構を解き明かし、輸送因子の無駄遣いを防ぐ蛋白質が細胞内輸送を促進するという新たな概念をも提示するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRM1単独の構造解析、Yrb2の反応中間体の構造解析に成功し、構造情報に基づいた機能解析(生化学、細胞生物学)も順調に進んでおり、着実にCRM1による核外輸送機構を解き明かしつつある。
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今後の研究の推進方策 |
Yrb2の機能メカニズムについて、構造に基づいて提唱している作業仮説を、反応速度論解析ならびに、出芽酵母を用いた生細胞での機能解析によって検証する。さらに、CRM1の核膜孔通過機構の鍵を握るFGヌクレオポリンとCRM1の相互作用について、構造解析と機能解析を進め、CRM1による核外輸送機構の包括的理解を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、消耗品をそれほど必要とせず、研究費を大幅に次年度に繰り越した。平成24年度は、より効率よく研究を進めるため、技術補佐員を雇用し、人件費で半分近くの予算を使用する。残りの予算で試薬やプラスチック器具などの消耗品の購入、学会参加旅費や論文投稿料の支払いを行う予定である。
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