研究概要 |
主に組織表面上における直接質量分析を用いた脂質構造解析について詳細に検討を行った.本研究で研究代表が用いた装置は日本電子社製JMS-S3000である.本装置はマトリックス支援レーザー脱離イオン源を搭載し,質量分離部である飛行時間型(TOF)質量分析計に17mの飛行距離を持つSpiralTOFと呼ばれる装置を搭載している.この17mの飛行距離により,非常に高い質量分解能を得ら れる装置である.この高い質量分解能は生体組織の直接質量分析において,非常に複雑なイオンピークパターンを示すスペクトルから,高精度に1つのピークを分離し構造解析のためのタンデム質量分析を行うことが可能となる.また,もう一つの特徴としては,本装置では高エネルギー衝突誘起解離(HE-CID)が可能となる.HE-CIDにより得られる分子の構造情報は非常に特徴的であり,特に複合脂質においては,その脂肪酸の構造までも詳細に検証することが可能である.本年度は,引き続きイメージングを試みるとともに、非常に高感度な試料前処理法を確立した。その手法では、研究者が2006年に発表した論文(Sugiura Y et al. Anal Chem 2006)の手法の変法であり、組織表面にマトリックスを真空蒸着しその上にマトリックス溶液を噴霧するものである。この手法により、これまで組織が溶媒により収縮するという現象が回避され、高い解像度でイメージングすることが可能となった。2013年3月に、弁理士と打ち合わせを開始し、特許明細書の準備を始めたところである。
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