研究課題/領域番号 |
23770118
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
北野 健 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (40346309)
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キーワード | タンパク質 / DNA / ヘリカーゼ / RecQファミリー / ウェルナー症候群 / ブルーム症候群 / 構造生物学 / 生化学 |
研究概要 |
ウェルナー症候群とブルーム症候群は,常染色体劣性のまれな遺伝病である。発症の原因はそれぞれ,WRN ヘリカーゼ(Werner syndrome protein)と BLM ヘリカーゼ(Bloom syndrome protein)に変異が起こり,機能欠損してしまうことが原因である。WRN と BLMは,DNA 巻き戻しのさいモーターとして働く ATPase ドメインに加えて,C 末に特徴的に保存された RQC (RecQ C-terminal) ドメイン と HRDC ドメイン (helicase-and-ribonuclease D-C-terminal) を有している。 今年度は,これらドメインを含む WRN ヘリカーゼと BLM ヘリカーゼの新たなタンパク質発現コンストラクトの作成を,重点的に進めた。タンパク質の N 末側には,精製を効率的に進めるためのアフィニティータグ glutathione-S-transferase (GST) を融合させた。 タンパク質発現条件と精製条件を詳細に検討した結果,いくつかのタンパク質試料を大腸菌によって大量発現させ,高純度に精製することができた。精製のためのクロマトグラフィーには,GST 融合タンパク質用アフィニティーカラム,イオン交換カラム,およびゲルろ過カラムを利用した。タンパク質や DNA 試料の濃度調製には,分光光度計による吸光度測定の方法を用いた。これらの研究成果の一部は,アメリカで開催された国際学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画していた作業のうち,目的タンパク質の大腸菌を用いた大量発現,クロマトグラフィーによる高純度精製,そしてアニーリングによる結晶化用 DNA 試料の調製は,おおむね順調に進んでいる。 ただし,WRN ヘリカーゼや BLM ヘリカーゼ と DNA の複合体結晶は得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
長さや配列を変化させた DNA 試料の調製と,新しい発現コンストラクトを用いたタンパク質試料の精製をおこなって,引き続き,結晶化条件の探索を進める。 結晶が得られれば,兵庫県播磨市の大型放射光施設スプリング-8,または茨城県つくば市の高エネルギー加速器研究機構 (KEK) に出張して,高輝度X線を利用したX線回折データ測定を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用額が生じた要因は,結晶化実験の進捗状況に合わせて,予算執行計画を変更したことに伴うものである。 今後,未使用額の研究費は,結晶化用および相互作用分析用の DNA オリゴの受託合成費,タンパク質の変異体作成・精製・結晶化実験・X線結晶解析に必要な消耗品の購入,スプリング-8 または高エネルギー加速器研究機構 (KEK) への国内旅費,学会で研究成果を発表するための国内および海外旅費,などに使用する予定である。
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