研究概要 |
ウェルナー症候群の原因タンパク質 WRN(Werner syndrome protein)とブルーム症候群の原因タンパク質 BLM(Bloom syndrome protein)は,RecQ ファミリーに属する DNA ヘリカーゼで,C 末に特徴的に保存された RQC(RecQ C-terminal)ドメイン と HRDC(helicase-and-ribonuclease D-C-terminal)ドメインを有している。 本年度は,BLM タンパク質 RQC ドメインのX線結晶構造解析を進めた。この結果,同ドメインにリン酸イオンが結合した状態のタンパク質立体構造を,分解能 2.7 オングストロームで決定することに成功した。これは,BLM ヘリカーゼの DNA 作用部位の立体構造を,世界で初めて明らかにした研究成果である。 BLM RQC ドメインは,結晶中で二量体を形成していた。溶液中での BLM RQC ドメインの挙動を調べるために,ゲルろ過クロマトグラフィー法,超遠心分析法,CD スペクトル測定法による分子形状の解析実験を行った。その結果,同ドメインは溶液中で,単量体として存在していることが明らかとなった。 さらに,RQC ドメインに結合しているリン酸イオンの位置を利用して,BLM ヘリカーゼが DNA に作用している状態の立体構造モデルを,コンピュータを使って作成した。この複合体モデルを使って,RecQ ファミリーヘリカーゼが,テロメア領域などの DNA を巻き戻す仕組みに関して,新しい機構を提唱することができた。 以上の研究成果を原著論文にまとめて,国際科学ジャーナルに発表した(Kim et al, 2013, Sci. Rep., 3, 3294.)。リン酸結合型 BLM RQC ドメインの立体構造は,タンパク質構造データベース PDB(Protein Data Bank)に原子座標とX線回折データを登録して,インターネット上で一般公開した(PDB ID:3WE2)。
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