研究課題/領域番号 |
23770119
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
平野 良憲 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (50452529)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 細胞内輸送 / 積み荷認識 / 軸索ガイダンス / モータータンパク質 / 結晶構造解析 / 分子複合体 |
研究概要 |
ミオシンによる積み荷輸送は,タンパク質やオルガネラを適切な場所へ運び,細胞での配置を規定するために不可欠なプロセスである.ミオシンはC末端側のtail領域のドメイン構造の多様性によって種々のシグナル伝達に応答している.しかし,現在までにミオシンのモータードメインの機能および構造研究は盛んに行われてきたが,これに比してtail領域の機能・構造解析は遅々として進んでいない.Unconventionalミオシンの1つmyosin-Xは,tail領域に存在するMyTH4-FERMドメインを介して微小管認識や選択的積み荷輸送などを行っている.そこで本研究ではMyosin-Xと積み荷分子との複合体の立体解析を行い,原子レベルで特異的な認識機構を明らかにすることを目的としている.本年度はmyosin-Xの積み荷輸送を担うMyTH4-FERMドメインと積み荷分子の1つ、軸索誘導のガイダンス分子であるネトリンの受容体DCCの細胞質領域との複合体立体構造決定を行った。その結果、DCCとmyosin-Xに見られる分子認識機構は従来のFERMドメインによる認識とは全く異なるものであることが立体構造解析の結果から明らかとなった。また、myosin-X MyTH4-FERMドメイン単独での立体構造解析も行った結果、マルチドメインから構成されるMyTH4-FERMドメインは2つのドメインが互いにかたく相互作用することで、1つの安定な立体構造体を形成していることや、DCC結合部位周辺は、疎水性残基による協調的な構造変化によって溝が広がることで、DCCのαへリックスを受容しやすい形に構造変化を起こすことを明らかとした。また、立体構造解析と合わせて,生化学的な実験によって微小管認識部位を同定するとともに,微小管と積み荷分子の結合が排他的であり,1度に1つの積み荷や微小管としか結合できないことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
目標の1つであったmyosin-XのMyTH4-FERMドメインと積荷分子複合体の立体構造解析に成功して、積荷認識機構の一端を明らかにした。さらに、その成果について論文としてまとめて、公表できたため、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はインテグリンβなど、他の積荷分子の認識機構を明らかにするため、複合体の結晶化スクリーニングを進め、結晶が得られれば、複合体の立体構造解析を行う。また微小管認識機構解明のため、微小管の構成タンパク質であるtubulinとの複合体の結晶化スクリーニングも推進する。これら構造解析を進めて、myosin-Xによる分子認識機構の多様性の解明を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用額が生じた要因は、研究の進捗状況に合わせ、予算執行計画を変更したことに伴うものである。研究設備についてはすでに整っているので、備品の購入は予定していない。主な研究費の用途としては、研究推進のために必要となる結晶化試薬や生化学実験のための試薬試薬など消耗品の購入を予定している。また学会での成果発表や放射光施設でのX線回折実験のための旅費にも使用する。
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